鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

会社の成長には社員の成長が必要

[要旨]

ランクアップの社長の岩崎裕美子さんは、事務職は派遣社員などに委ね、正社員は、ライン部門に配置しました。その理由は、会社が成長するためには、従業員にも成長してもらう必要があると考え、正社員には定年までのスキルアップできる人事評価制度をつくり、それを導入したからです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、株式会社ランクアップの社長の岩崎裕美子さんのご著書、「ほとんどの社員が17時に帰る売上10年連続右肩上がりの会社」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、岩崎さんの会社では、商品の発送業務など、定型的な業務はアウトソースすることで、自社では、自社でしかできない「考える仕事」だけを集中して行うようにした結果、効率化を図ることができ、残業を減らすことにつながっているということを説明しました。これに続いて、岩崎さんは、会社での事務職を廃止し、業務の効率化を図ったということを述べておられます。

「事務作業は、アルバイトや派遣社員の方にお願いして、社長には、本来やるべき仕事に集中できる環境をつくっています。また、事務職を廃止したのは、他にも理由があります。それは、弊社で人事評価制度を採用したためです。私は、社員には、定年まで働いて欲しいと思っています。さらに、会社の成長には、社員の成長が必要だと思っています。ですから、『この仕事をしたら、将来、こんなことができるようになって欲しい』という思いを込めて、成長の段階を登っていけるように、人事評価制度を取り入れることにしたのです。

このような考え方で人事評価制度をつくったときに、事務の仕事をしている社員に対して、定年までの将来のスキルアップの階段をつくることができなかったのです。どうしても事務作業のスキルアップには限界があり、入社してから30年もの間、スキルアップを続けていくのは難しいのです。そこで、人事評価制度を導入したタイミングで事務職を廃止し、社員には、全員、使命を持った業務を任せることにしました。もともと事務職で入社した社員は、最初は戸惑っていましたが、スキルアップの階段を見せることで、自分の成長を感じられる業務に魅力を持ってもらうことができました」(84ページ)

私は、岩崎さんのような考え方が、必ずしも正しいとは限らないと思っていますが、規模が小さい会社では、正社員はライン業務に専念してもらい、管理業務は派遣社員などに担ってもらうことの方が、経営資源の効率的な配分をすることになると思います。そして、このことだけでなく、岩崎さんの着眼点がすばらしいと思うことは、「会社の成長には、社員の成長が必要」ということです。一般的には、会社の成長とは、単に、売上を増やして規模を拡大することと考えられがちです。

それはその通りなのですが、忘れられがちなことは、規模が拡大に対応した組織体制の構築も必要ということです。例えば、売上が10倍になれば、社長が担わなければならない管理業務の比重が増加し、現在、社長が担っている部分の大部分は、部下に任せなければならなくなるでしょう。そこで、岩崎さんは、従業員の方にスキルアップをしてもらうことを通して、会社を成長させようとしたのだと思います。また、そのようなキャリアパスを明確にすることで、従業員の方の士気が向上することにもつながっていると思います。

2023/8/13 No.2433