鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

採用の時点で幹部に育成する視点を持つ

[要旨]

経営コンサルタント小宮一慶さんは、その人のを、将来の幹部にするという視点を持たずに採用すると、採用後も幹部に育たないと指摘しています。そのようなことが起きないようにするためにも、まず、自社のキャリアパスや人材育成方針を明確にすることが大切です。


[本文]

経営コンサルタント小宮一慶さんの、ダイヤモンドオンラインへの寄稿を読みました。小宮さんは、新卒で東京銀行(現在の三菱UFJ銀行)にご勤務された経験があるそうですが、同行では、職員数約6,000人のうち、半数の約3,000人が女性であり、小宮さんが同行での10年間のご勤務の間、3回ほど女性の上司のもとで働いたことがあるそうです。このご経験から、小宮さんは、男女に能力の差はないと考えているそうですが、中小企業に女性経営幹部や役職者が少ない要因には、「将来の経営幹部」という視点で女性を採用せず、一般的な事務職として採用しているからだとご指摘しておられます。

私は、小宮さんのご指摘はその通りだと思うのですが、女性を事務職としてしか採用しない要因の前に、中小企業では、キャリアパスや育成方針がないために、女性=事務職という固定的な考え方をしている会社が多いのではないかと思います。キャリアパスとは、従業員の方がどのような業務経験やスキルを習得すれば、どのポジションや役職に就くことができるかということを明確にしたものですが、中小企業では、実態としては、法律で作成が義務付けられている就業規則も存在しないことが珍しくなく、さらに、キャリアパスについては、社長自身も必要性がないと考えていることも多いようです。

ひとことで言えば、採用することだけが目的になっていて、採用した後のことは成行という会社が多いのではないでしょうか?そのような会社では、従業員の方が向上心を持っていたとしても、会社から自分はどのような能力を望んでいるのかが不明確であり、足踏みをすることになってしまうでしょう。また、会社側も、従業員に対して、長期的な視点からの育成活動は行わず、その場その場で、こういう仕事をして欲しいとしか要望を出さないことになり、次の会社を牽引してくれるような幹部候補はなかなか育たないでしょう。

現在の経営環境の変化は激しく、目の前の課題への対応だけで精一杯という会社も多いと思いますが、事業を支える人材育成にも目を向けなければ、会社には受動的な対応しかできない人材だけになってしまうでしょう。そこで、自社に、まだ、キャリアパスや人材育成方針がないという会社は、社長の考え方を明文化し、それを社内で周知することから始めるだけでも、従業員の方の士気が向上し、リーダーシップを発揮してくれる方が現れるものと思います。

2021/12/27 No.1839

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