鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

コーチは教えてはいけない

[要旨]

プロ野球千葉ロッテマリーンズ監督の吉井理人さんは、コーチは選手に対して、「文句を言うな、いいからやれ」と言ってはいけないといいます。なぜなら、選手は選手なりに、自分の能力を活かすための練習方法を考えているので、それを無視してしまうと、その選手の個性を活かす機会を失ったり、選手のやる気を下げてしまうからです。


[本文]

プロ野球千葉ロッテマリーンズ監督の吉井理人さんのご著書、「最高のコーチは、教えない。」を拝読しました。吉井さんは、現役時代は、日本、米国で投手として活躍しましたが、指導者となってからは、北海道日本ハムソフトバンク千葉ロッテで投手コーチを務め、ダルビッシュ有大谷翔平、佐々木朗希らの名選手を育成した能力が評価されています。また、吉井さんは、2014年から筑波大学大学院でコーチング理論につい学び、コーチとしてのスキルを高めている点からも、本書から学べる点は多いと感じています。まず、吉井さんは、本のタイトルにある、「コーチは教えてはいけない」理由について、次のように説明しています。

「プロの世界に入ってくる選手には、やりたい方法を持っている選手は多い。違いがはっきりした時点で話し合い、その考え方は違うと論理的に説明されれば、理解し、納得して、コーチの指導の通りにやる。しかし、理由も説明せず、『文句を言うな、いいからやれ』と言われたら、選手はやる気を失う。ただし、やり方がわからない選手に、『いいからやれ』という指導が効果的な場面もある。どちらのケースもあり得るからこそ、まずは選手を見て、選手と話し合う必要があるのだ」(25ページ)

この、「文句を言うな、いいからやれ」と言ってはいけないということは、理解は容易だと思いますが、実際には、このような言葉がきかれる職場は多いのではないでしょうか?その理由のひとつは、これまで、日本の会社では、従業員の育成については、あまり労力をかけなかったからだと思います。すなわち、新しい従業員が入ってきたら、先輩従業員と同じように育成すればよいと考えられているからでしょう。ところが、現在は、従業員の個性を活かす方が成果は高まりますし、新しく務める従業員自身も、自分の個性を大切にして欲しいと強く意識している人が増えています。

だからこそ、「文句を言うな、いいからやれ」は言ってはいけないというわけです。ところが、指導する側は、自分自身がそのように育成されていないことが多いので、育成する側になると、その方法が分からないという面もあると思います。そこで、経営者としては、新たな従業員だけでなく、管理職などにも育成方法を教える必要が出てきているということです。では、具体的にどうすればよいのかということについては、次回以降の記事をお読みいただき、少しずつ学んでいっていただきたいと思います。

2023/5/7 No.2335