[要旨]
野球チームには、4番バッターのようなスター選手だけでなく、縁の下の力持ちような役回りの、守備のうまい、7番セカンドのような選手も必要です。会社の事業も、スター選手だけをそろえようとするのではなく、さまざまな個性のある従業員をそろえ、チームプレーによって成果を得ることができるように指導する役割が、経営者の方に求められています。
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ダイヤモンドオンラインに、浄土真宗本願寺派僧侶の江田智昭さんの寄稿が載っていました。その概要は、漫才コンビのオードリーの若林正恭さんが、テレビ番組で、若林さんはあえて「セカンド7番」の役回りに徹しているということをお話していたというものです。
すなわち、「セカンド7番」の人は、守備がとてもうまいが、そのことを褒める人はあまりいないのに、エラーをすると、とても批判される。本当は、「4番バッター(スター選手)」のような役回りをしたいのだが、自分の個性ではそれができず、そのことに劣等感を感じることもある。しかし、自分がそのような役回りをしようとすれば、かえって失敗してしまうので、いまは腹をくくって、「セカンド7番」に徹することにしているというものです。
このような若林さんの姿勢は、直接、たくさんの人から称賛を得るような立場になりたいという欲求を抑え、あえて目立たない縁の下の力持ちとなり、チームとして最大の成果が得られるようにしようという、すばらしい考え方であることは、多くの方がすぐに理解できることでしょう。そして、この若林さんのお話からは、組織のすばらしさについても、いくつか学びとることができると思います。
ひとつは、チームは、「4番バッター」だけでは成り立たず、守備が上手な「7番セカンド」(縁の下の力持ち)も必要ということ。ふたつめは、個性の違う人が集まることで、ひとりでは得ることができない成果を得ることができるようになること。みっつめは、組織の構成員が、おのおのの考え方ではなく、組織の一員として、自分はどういう行動をとるべきかを考えて行動することで、組織として得られる成果が高まることなどです。
これらのことについても理解される方は多いと思いますが、「組織」は目に見えないものであることから、「組織人」としての行動をしたり、そのような行動ができるような体制を整えようとしたりする人は、少数ではないかと思います。すべての方からではないですが、私はこれまでに、多くの中小企業経営者の方から、「うちの会社は営業ができる人しか雇うことができない」ということばを、しばしば耳にしてきました。
このような経営者の方の考えを、野球チームに例えれば、「この野球チームはあまり強くないので、選手は、それぞれ4番バッターのような強い打撃力を身に着け、自分でホームランを打って点をとって欲しい」と言っているようなものです。でも、自分で点を取れる実力がある人は、そもそも、シングルプレーヤーとして活躍できるので、チームに加わろうとはしないでしょう。
すなわち、組織としての会社は、チームプレーで事業を営むものなので、独力でホームランを打てる(独力で稼げる人)を雇うことの意味は、あまりありません。したがって、経営者の方の役割は、従業員の方たちの個性を活かし、チームとしてどうやって成果を得るかを考えたり、従業員の方たちを指導したり、指揮したりする役割であるということだと思います。経営者の方にこれが理解されていなかったり、または、実践できていないために、会社の業績が改善しないという例は、珍しくないと思います。