鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

心理的安全性

[要旨]

職場に心理的安全性がなければ、多様な個性のある従業員がいても、自分の意見を発言しにくく、その個性を十分に発揮することができません。そこで、環境変化の激しい時代は、従業員が個性を発揮し、組織活動が活性化できるよう、職場の心理的安全性を高めるための対応が、経営者に求められています。


[本文]

九州大学ビジネススクールの松永正樹准教授が、ポッドキャスト番組で、フォルトライン理論についてお話しておられました。フォルトラインとは、「例えば、6名のメンバーから成るチームがある時、3人が50代男性で営業職、3人が30代女性で事務職だった場合、大体、それぞれで男女で固まることが多くなるが、この、ふたつのグループの間には断層」をいうそうです。

このフォルトラインがあると、「両者の間のコミュニケーションは相対的に少なくなるので、女性のメンバーが面白いアイデアを持っていたとしても、それが男性の営業メンバーに伝えられる可能性は低くなり、結果として組織として多様性を活かすチャンスも小さくなる」と、松永さんは指摘しています。そこで、その解決策のひとつとして、チーム内で人が固まらないよう、多様な人で構成される、モザイク組織を作ることが大切だと、松永さんは述べておられます。

しかし、日本の会社では、上司の意に沿わない意見は言いにくいということが多く、そのような組織は、メンバーに個性があっても、職場では個性を出しにくく、結局、個性の違う人をそろえる意味がなくなるとも、松永さんは指摘しています。これは、かつてから言われている、上意下達か、ボトムアップかという議論と、ほぼ同じだと思います。私は、上意下達が、必ずしも間違っているとは限らないと考えていますが、現在は、環境変化の激しい時代であり、ボトムアップが重要になりつつあると思います。

ただ、ここで問題になるのは、松永さんもご指摘しているように、「上司の意に沿わない意見」を言えるようにする、心理的安全性のある環境を作ることができるかどうかということです。日本では、以前より少なくなってきたとはいえ、年功序列の風潮が少なからず残っており、この心理的安全性を作ることは、まだまだ容易ではないようです。でも、それを作ることができるかどうかが、21世紀の経営者の能力の問われるところと言えるでしょう。

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