鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

情報化武装にはユーザーのスキルも必要

[要旨]

オーケーがピザの焼き具合をAIで判定させようとしたとき、2,000枚の写真を使っても精度を高めることができませんでした。このように、情報化武装を行う際には、一朝一夕で効果を得ることができないので、会社の競争力を高めるためには、情報技術に関するリテラシーも高めなければならないということに注意が必要です。


[本文]

今回も、前回に引き続き、フリーライターの酒井真弓さんの、スーパーマーケットのオーケーに関する取材記事について、私が気づいた点について述べたいと思います。(ご参考→  )前回は、情報化武装は、単に、合理化や効率化を図るだけでなく、新たな価値を生み出すことを目指すことが大切ということを説明しましたが、この記事について、私がもうひとつ注目したところがありますので、その部分を以下に引用します。

「実際に焼けたピザを撮影し、(ベーカリー部長の)笹生部長に目視で仕分けていただきました。社員食堂の端っこに大型モニターを置いて、ピザの画像を一枚一枚映し、笹生部長が、『OK』、『OK』、『焼き過ぎ』、『生焼け』……と。1,000枚のピザの画像を仕分けていただきました。でも、1,000枚では足りなかったんです。実際に焼き色を判定してみると、その精度は78%と極めて低かった。識者に相談すると、『画像の枚数が少ないのでは』と。そこで、さらに1,000枚増やし、2,000枚にしたんです。笹生部長にあと1,000枚の仕分けをお願いすると、快く引き受けてくださいました。それで、お言葉に甘えてしまいました」

ここまでが引用ですが、このように、AIの精度を高めるために、2,000枚の写真を使うことになったそです。しかし、AIの精度が低かったのは、写真の枚数が少ないからではなく、写真のほとんどが「OK」のもので、「焼き過ぎ」と「生焼け」は少なかったからだそうです。すなわち、NGとすべきものの写真が少なかったことが、判定の精度が低い原因になっていたということです。

これは、ピザの焼け具合の判定をAIに行わせるという事例ですが、2,000枚の写真を使ってもうまくいかず、ようやく別のところで原因がみつかったということです。ところが、情報化武装で経営者の方が陥りやすい誤解は、情報化武装することで、直ちに目覚ましい効果が得られると考えているということです。しかし、大企業のオーケーであっても、このような手間をかけ、ようやく効果を得る段階に至ったわけです。

そういう意味では、情報化武装は、導入する側に、ある程度のスキルや手間を求められるのです。だからといって、情報化武装を避けていては、ライバルとの競争にますます差をつけられることになります。したがって、これから会社の競争力を高めていくには、情報技術に関するリテラシーを、会社組織と個々の従業員が高めていくという点に着目する必要があるでしょう。

2023/4/22 No.2320