鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

マーケティングは販売を不要にする

[要旨]

事業の目的は顧客を創造することですが、それを実現するために、マーケティングを実践することが有効です。しかし、マーケティングは、販売活動のことと理解している会社が多く、本来のマーケティングである、販売を不要にするしくみをつくることを実践している会社は少ないようです。


[本文]

今回も、大阪ガスエネルギー・文化研究所の主席研究員の鈴木隆さんのご著書、「御社の商品が売れない本当の理由-『実践マーケティング』による解決」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。前回は、現在は、かつてのように、目先の利益にだけ目が向き、短期的な売上や利益を追うことは、かえって顧客の信頼を失うことになり、事業がうまく行かなくなる、すなわち、「(短期的)な利益を事業の目的にする」ことは避けなければならないということを説明しました。

鈴木さんは、これに続いて、事業の目的は利益ではなく顧客の創造であり、それを実現する方法として、マーケティングが重要であると述べておられます。ただし、そのマーケティングについては、正しく理解されていないことも多いと述べておられます。「世の中の99%以上の人が、『マーケティングは、要するに売ることでしょう』と思い込んでいるといっても過言ではありません。(中略)しかし、マーケティングは売ることではありません。

ドラッカーが指摘するように、マーケティングとは、売らなくても売れるようにすることであり、売ること・売り込むことであるセリングを不要にすることです。セリングとは、販売やセールスのことですが、マーケティングの世界では、マーケティングと対比することばとしてセリングを使うのがしきたりなので、本書でも従うことにします。売ることであるセリングは、売らなくても売れるようにすることであるセリングとは、まったく正反対の考え方なのです」(34ページ)

鈴木さんがご指摘しておられるように、マーケティングは誤解されている面が多いと思います。ちなみに、日本マーケティング協会の定義では、「マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である」となっています。やや抽象的な定義ですが、少なくとも販売活動だけを指しているということではないことはご理解できると思います。ただ、この定義は抽象的なので、理解がしにくいという面もあると思います。

そこで、ドラッカーの定義するマーケティングが、しばしば、引用されるのだと思いますし、私もドラッカーの定義は理解しやすいと思います。ちなみに、ドラッカーの定義は、「The aim of marketing is to selling superfluous」(マーケティングの目的は、販売を不要にすること)です。この、superfluousの意味ですが、unnecessaryのように無益のというよりも弱く、余分のという意味のようです。

したがって、ドラッカーは、マーケティングによって販売はしなくすむようになるというよりも、販売に注力しなくてもよくなると考えているのではないかと、私は考えています。ただ、ここまでの内容は、多くの方がご理解されると思うのですが、販売活動を不要にするマーケティングのしくみを作ることは、なかなか容易ではないと思います。したがって、前述のように、マーケティングについては、正しく理解されていないばかりでなく、真の意味でのマーケティングもなかなか実践されず、その結果、売り込みのみに注力する会社が多くなっているのではないかと思います。

2023/2/20 No.2259