鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

『会社=社長』から『会社≠社長』へ

[要旨]

ある程度の割合の中小企業は、経営者の個人的信用で事業を営んでいる面があります。このことは、外見的には会社の事業であっても、実態としては、個人事業の状態といえます。したがって、このような状態の会社に対して融資を行うとき、銀行は、経営者に対して連帯保証人になってもらい、実質的に、経営者に対する融資を行うときと同じ状態にすることを求めていると考えることができます。


[本文]

前回は、銀行が中小企業に融資をするときに、経営者に対して保証を求める理由は、「規律付け」という面があり、それに対応した対策として、中小会計要領に基づく会計処理を行うことで、会社の会計面での透明性が高まり、銀行が保証を不要と判断するための材料のひとつになるということについて説明しました。今回は、銀行が、経営者保証を求める理由について、別の面から説明したいと思います。中小企業では、経営者が、個人的な人脈や信用などで事業を行うことは珍しくないと思います。

いわゆる、経営者の「顔」で仕事をしているということです。このような状態に問題であるわけではないのですが、このような状態にある会社は、実質的には、社長が個人で事業を営んでいる状態と言えます。したがって、形式上は会社で事業を営んでいることになっているとしても、実質的には個人商店と同じ状態であるということになります。そこで、もし、何らかの事情で、経営者が会社の事業に関わることができなくなってしまった場合、その会社の事業は継続できなくなってしまう可能性が高い状態であるといえます。

そのため、銀行は、会社に対する融資について、経営者に連帯保証人となることを求めるわけです。これを、言い換えれば、銀行は、経営者の信用で会社に融資をするわけですが、融資契約は経営者に対してではなく、あくまで会社と結ぶので、経営者に連帯保証人になってもらうことで、実質的に経営者に対する融資契約を結ぶことと同じ状況にしているわけです。よく、銀行から、自分の経営する会社への融資を断られた経営者が、「銀行はオレのことを信用していなのか」といった不満を口にすることがあります。

本当であれば、「銀行は、私が経営する会社を信用できないのか」と考えるべきところですが、ある程度の割合の中小企業は、会社は経営者そのものの状態なので、そう考えることは自然だと思います。したがって、このことを反対に考える、すなわち、「会社=経営者」から「会社≠経営者」にすると、それは、銀行からみて、経営者保証を条件としない判断材料のひとつになります。この続きは、次回、説明します。なお、念のために書き添えますが、会社が、経営者の信用で事業を営むこと、経営者がと会社が実質的に同一の状態が問題であるということではありませんので、ご注意ください。

2022/11/17 No.2164