[要旨]
中小企業政策審議会金融小委員会で配布された資料によれば、保証付DDSについて、「中小企業活性化協議会等による計画のみならず、認定経営革新等支援機関の支援を受けて作成された経営改善・事業再生等の計画においても対象とする」見込みのようです。そこで、DDSの活用を検討している経営者の方は、認定経営革新等支援機関などの専門家に、早い段階でご相談することをお薦めします。
[本文]
令和4年12月19日に開かれた、中小企業庁の第8回中小企業政策審議会金融小委員会で配布された事務局説明資料に、保証付DDSの活用が載っていたことが話題になっています。ちなみに、DDS(デット・デット・スワップ)とは、すでに利用している融資契約について、他の融資よりも後に返済を行うという契約に条件変更することです。この条件変更をした融資は劣後融資と呼ばれ、形式的な契約は融資のままですが、実質的には優先株式(議決権を持たない、または、制限される代わりに、普通株式よりも配当を多く受け取ることができる株式)と同じ機能を持っているため、銀行の融資審査においては、自己資本と見なすことができる、すなわち、DDSを行う前よりも会社の評価を高めることができます。
この劣後融資への信用保証協会の保証制度は、新たに設けられるものではなく、すでに利用されていますが、前述の資料には、「保証付DDSの活用を促進するため、要件を拡充し、中小企業活性化協議会等による計画のみならず、認定経営革新等支援機関の支援を受けて作成された経営改善・事業再生等の計画においても、全債権者の合意を得たものであれば対象とする」と記載されています。すなわち、これまでは、中小企業活性化協議会の関与が必要だったわけですが、認定経営革新等支援機関の支援によって作成した計画でも、保証付DDSを利用することが可能になる見込みのようです。したがって、私は、もし、DDSを利用できる会社であれば、これを積極的に活用することが望ましいと思います。
ただ、現実的には、保証付DDSの承認を得るための計画を作成できるノウハウを持った経営革新等支援機関は少ないという壁は残っていると思います。もうひとつの問題は、DDSの条件を受け入れる会社も少ないと思っています。というのは、このDDSを利用するには、経営者の退任や、株主としての権利・地位を失う場合もあるからです。具体的に言えば、社長が引き続き事業に携わることになったとしても、別のポジションに移ることになるかもしれません。仮に、社長を退任しないことが認められる場合であっても、株主はその権利を失うので、オーナー社長が雇われ社長になってしまいます。(ちなみに、私は、かつて、オーナー社長だった社長が、事業再生後に雇われ社長になったものの、その後、再びオーナー社長にもどった事例を見たことがあります)
オーナー社長にとっては、「会社=社長」なので、社長に対して責任を問われることは、特に、心理面で抵抗があることが多いようです。また、自分は納得しても、対外的に事業再生をしていることを知られたくないという場合もあるようです。(場合によっては、外見的には、事業再生をしていることを知られないように配慮してもらえることもあります)ここまで、DDSについて否定的なことを書きましたが、私は、DDSという手法については肯定しています。ただ、「会社=社長」という状態の会社には受け入れられにくいと考えています。とはいえ、自社の事業を確実に再生するためには、1日でも早く対策を講じることが重要なので、自社の再生を検討している経営者の方は、早い段階から多くの選択肢を持って専門家に相談することをお薦めします。
2023/1/5 No.2213