[要旨]
法律的な観点からは、中小企業診断士が行う、融資申請の支援は、「金銭貸借等の媒介」に該当する可能性があります。しかし、銀行からみて「媒介」されていると判断される案件は、承認が難しくなるので、私の場合、融資申請の支援は後方からの支援に徹し、経営者の方が主体的に融資申請を行ってもらうようにしています。
[本文]
私のような銀行出身の中小企業診断士は、頻繁に、融資の申請のご支援の依頼を受けます。これに関して、融資申請の支援が。「金銭貸借等の媒介」に該当するのかということが、ときどき、話題になります。これに関しては、金融庁から、法令解釈に関する書面照会への回答書が公表されています。それによれば、「資金の融通を受けたい者と資金の融資を行いたい者との間に立って、金銭消費貸借契約の成立に尽力する行為は、資金の融通を受けたい者又は資金の融資を行いたい者のどちらのために行われているかを問わず、金銭の貸借の媒介に該当する。
なお、金銭の貸借の媒介に該当するか否かは、金銭の貸借を内容とする契約の成立に向けた一連の行為における当該行為の位置付けを踏まえた上で総合的に判断されるものであり、一連の行為の一部のみを取り出して、直ちに金銭の貸借の媒介に該当しないと判断することは適切でない」とあり、中小企業診断士が、顧問先の融資申請の支援をしたとき、これに該当する可能性があるようです。ちなみに、「金銭の貸付け、または、金銭の貸借の媒介」を事業として行う会社は、貸金業法により、都道府県知事等の登録を受ける必要があります。
ただし、別の観点から、私は、中小企業診断士が顧問先の融資申請の支援を行うことは、「金銭貸借等の媒介」に該当しないと考えています。なぜなら、仮に、中小企業診断士が融資の媒介をしようとしていると銀行に判断されると、融資の承認が得られない可能性が高まるからです。銀行は、融資を受ける会社の社長が主体的に融資を受けようとしていなければ、融資をすることに懸念を感じます。
もちろん、融資の媒介を、会社の外部の人に依頼することは、その会社が融資を受けたいと考えているからでしょう。でも、そのような会社は、事業の改善に、当事者意識を強くもって取り組もうとしているというように、銀行から評価してもらえず、融資審査に悪影響が出るでしょう。したがって、私も、中小企業診断士として顧問先の融資申請の支援をするときは、経営者の前面に出るようなことはせず、後方からの支援に徹します。
割合としては少ないですが、中小企業診断士である私に、もっと、前面に出て銀行を説得して欲しいと望む経営者の方もいますが、そのような経営者の方には、中小企業診断士が前面に出ると、銀行から消極的な評価を受ける可能性があると説明しています。会社が融資を受けるということは、会社が銀行から信用してもらうということであるわけですから、そこに、中小企業診断士が「媒介」をするようなことをすれば、その目的は達成できなくなる可能性が高まります。