鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

低利融資とモラルハザード

[要旨]

現在は、信用度の低い中小企業も、政府の支援策によって低金利で融資をうけることができます。特に、コロナ禍であれば、それは妥当ですが、ポストコロナになった時は、政府の支援策は最小限にとどめ、信用度に応じた金利を支払うようにならなければ、信用度の低い中小企業の間で、モラルハザードが頻繁に起きることになるでしょう。


[本文]

信用調査会社の東京経済の取締役東京支社長で、中小企業診断士の井出豪彦先生が、ダイヤモンドオンラインに、SBIソーシャルレンディングSBISL)に関して寄稿しておられました。SBISLは、融資先の資金使途の確認義務を怠っていたことが2月に発覚し、6月8日に、関東財務局は、同社に行政処分を行うことを発表しました。また、同社の親会社のSBIホールディングスは、それに先立つ、5月24日に、同社を廃業することを発表しました。

そして、井出先生は、このようなトラブルが起きる背景には、「金利10%程度での貸し出しに対応するミドルリスク層が現実にはほとんど存在しないこと」と述べておられます。また、「金融機関から年利1%未満で借りられる(中小企業の)分厚い層があり、片や、月利1割のような高金利に相当する手数料を支払うファクタリングを利用する層があると知ると、中間のレイヤーが存在すると考えてしまうが、これまでの筆者の取材経験では、中間には顧客となりそうな層はない」と指摘しています。

本旨からそれますが、井出先生は、「8%程度の金利を標榜し、金融機関より審査基準を緩めると、たちまち、ハイリスク層にしゃぶり尽くされ、さらに貸し出し側が融資先と結託したような不正が起きる」とも述べておられ、その例が、SBISLのトラブルであると指摘しておられます。話をもどすと、「低金利で融資を受ける会社と、高金利で融資を受ける会社の中間には、顧客となりそうな中小企業はない」、すなわち、ミドルリスク層はないという、井出先生の指摘は、半分くらいはその通りだと、私も考えています。

でも、例えば、債務超過の会社は、本来は、リスクに相当する金利を支払って銀行から融資を受けるべきところ、政府系金融機関などから低利で融資を受けることができていることも、ミドルリスク層が存在しない原因になっていると、私は考えています。すなわち、ミドルリスク層はあるけれど、政府の支援策によって、ミドルリスク層も低利で融資を受けているという状態なのだと思います。

とはいえ、債務超過の会社に、政府系金融機関が支援をすべきかどうかという点は、議論の分かれるところです。現在は、コロナ禍で政府の手厚い支援が行われることは妥当ですが、ポストコロナになれば、会社の信用度合いに相応した金利で融資を受けることが妥当であると、私は考えています。そうでなければ、信用度の低い中小企業の間で、モラルハザードモラルハザードが頻繁に起きてしまうことになります。

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