鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

中小会計要領で財務諸表の透明化を図る

[要旨]

銀行が中小企業への融資の条件として、経営者に保証を求める意味合いは、経営者の個人財産で融資を返済してもらおうとするというよりも、会社への融資を、経営者が私的に流用することを防ぐという意味合いが高いものです。したがって、中小会計要領を導入し、会社の財務情報の透明性を高めることで、公私混同しているのではないかという、銀行からの懸念を取り除くことが期待できます。


[本文]

前回は、金融庁の監督指針の変更により、銀行が、経営者保証を条件を条件とする融資を行う場合に、その理由を銀行が説明をすることを義務化することは、かえって、銀行に対して、中小企業への融資を消極的にしてしまう原因になるのではいかと考えられるということを説明しました。では、このような趨勢に対して、中小企業は、これからどう対処していけばよいのかということについて、私の考えを述べたいと思います。

まず、経営者保証の意味合いについてですが、表面的には、会社が融資を返済できなくなった時は、経営者が、会社に変わって経営者の財産で返済をすることを約束することです。しかし、一般的には、中小企業が銀行から融資を受けるときは、経営者自身にも、めぼしい財産がないことがほとんどです。そもそも、経営者に財産があれば、経営者が出資金として会社に資金提供できるわけですから、それでも資金が足りないために、銀行から融資を受けるわけです。そう考えれば、銀行が経営者に対して保証を求める意味は、融資の返済を、経営者の財産で返済してもらおうという意図は、あまり大きくないと考えられます。

では、なぜ、銀行は、経営者に対して保証を求めるのかというと、「規律付け」の意味合いが大きいということです。これは、具体的に言えば、よくも悪くも、中小企業は、会社の財布と経営者の財布が同じになっていることが多いので、銀行が会社に対して行なった融資の資金を、経営者が、事業以外の個人的なことに使ったとしても、保証契約によって、銀行がそれを追求できるようにしするという効果があります。

ですから、これは、経営者保証ガイドラインにも書いてあることですが、会社と経営者の財布が別であるということを、銀行に理解してもらうことが大切だということです。では、そのためにはどうすればよいのかというと、詳細な説明は割愛しますが、中小会計指針か中小会計要領に基づく経理規定を作成し、それに従った会計記録を行うことです。このようなことを行うだけでも、財務諸表の透明性が高まり、銀行からの信頼も増すことにつながります。

ちなみに、中小企業庁が平成27年に公開した資料によれば、中小会計要領を導入している会社は、売上高が1億円未満の会社は5.2%、5億円未満は8.2%、30億円未満は10.9%、30億円以上は8.9%と、あまり高くありません。(ご参考→ https://bit.ly/3O4uAGd )この、中小会計要領を導入することは、難しいことのように考えている経営者の方も少なくないのではないかと思いますが、決して難しいことではありません。

また、導入しようとする際は、最初に労力がかかるかもしれませんが、銀行から評価されるためという前に、自社の経営改善にも活かすことができるものです。そして、中小企業のほぼ90%の会社が実践していないことを実践することは、繰り返しになりますが、銀行から見て、とても評価が高くなります。したがって、まだ、中小会計要領を導入していない会社に対しては、今回の、金融庁の監督指針の変更を機会に、ぜひ、中小会計要領の導入をお薦めします。この続きは、次回、説明します。

2022/11/16 No.2163