鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

会社が倒産すると社長は家を失うのか?

[要旨]

経営者の方は、会社が融資を返済できなくなっても、自宅を失いたくないと考え、経営者保証を外したいと考え、それはもっともなものです。しかし、実態としては、会社の業況が悪化したときは、経営者の方が自宅を持っている場合、銀行からそれを担保として提供することを求められるので、自宅を手放さずにすむ例はあまりないでしょう。


[本文]

今回も、前回に引き続き、Clubhouseでご相談を受けた、経営者保証に関するご相談の内容についてシェアしたいと思います。経営者保証をせずに融資を受けたいという方は、もし、会社が融資を返済できなくなったとき、保証人である経営者の方が、自宅などの資産を失ってしまうようなことは避けたいと考えるからだと思います。そう考えることについてはもっともだと思います。

ただ、経営者の自宅を、会社の融資の担保として契約(普通抵当権契約、または、根抵当権契約)している場合、会社が融資の返済をできなくなったときは、銀行は、担保物件を処分して融資の返済にあてることになりますので、自宅はあきらめざるを得ないでしょう。本題からそれますが、銀行は、一般的に、不動産担保の担保物件の所有者に対して、担保契約を行うと同時に、連帯保証人になることを求めます。担保提供者が連帯保証人ではないということは、極めて例外的です。詳しくは、私の過去の記事をご参照ください。

話を戻すと、では、自宅を担保にせず、単に、連帯保証契約しかしていない経営者は、会社が融資を返済できなくなった場合、自宅を失うことになるのかというと、必ずしもそうとは限りません。経営者保証ガイドラインでは、連帯保証人に会社の融資の返済を求めるときは、ある程度、連帯保証人の手許に残す資産について配慮するよう求めており、その中には、華美でないという前提条件がありますが、自宅も含めることとされています。(経営者保証ガイドライン10ページ )

だからといって、すべての事例で、経営者が自宅を失わずにすむということでもありません。とはいえ、経営者が担保に入っていない自宅を持ちつつも、会社が融資を返済できなくなるということは、実は、ほとんどないと思っています。なぜなら、融資の返済ができなくなる前の段階で、会社の業績が悪化した会社は、資金繰がきつくなり、そのような中で銀行から融資を受けようとする際に、社長に自宅を担保提供するよう要請することが多いからです。

したがって、会社が融資の返済ができなくなったとき、経営者の方が自宅を失わないことは珍しいと、私は考えています。これについては、経営者の方の負担が大きいと感じる方がいるかもしれませんが、銀行が、業況が苦しい会社に融資をする場合は、当事者である経営者の方に負担を求めることは、それほど無理筋とは言えないでしょう。したがって、経営者保証を外せば、経営者の方が自宅を失わないようになるかというと、実態として、あまり意味がないと考えられます。

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