先日発売された、経営者向けの週刊誌、日
経ビジネスの2018.03.19号に、
金融庁長官の森信親さんへのインタビュー
が載っていました。
(ご参考→ https://goo.gl/o4yf2g )
森長官は、大胆な発言で、これまで何度も
報道機関にそれが取り上げられてきました
が、今回のインタビューの内容も、これま
での発言を踏襲するものでした。
インタビューの要旨は、「銀行は、担保や
保証に依存して融資をするという、顧客本
位の事業をしていない。
本来は、融資先の会社の将来性を評価して
融資すべきで、それは、銀行にとっても、
ビジネスチャンスを増やすことになる」と
いうものです。
私は、この森長官の話していることだけを
きくと、正しいことを言っていると思いま
す。
しかし、森長官のお話しの前提と、現実に
は乖離があると私は感じており、言葉通り
のことを実現することは難しいと思ってい
ます。
森長官は、銀行の中には目利き能力が低い
ところもあり、それを改善しなければなら
ないと言いたいのだと思います。
確かに、目利き能力が低い銀行も少なくな
いと、私も感じています。
では、銀行が目利き能力を高くすれば、そ
れで、すべて解決するのでしょうか?
少し本筋と離れるかもしれませんが、現状
を説明する意味で、経営者保証に関するガ
イドラインについて触れたいと思います。
経営者保証に関するガイドラインとは、
務局となり、経営者保証を提供せず融資を
受ける際や保証債務の整理の際の『中小企
業・経営者・金融機関共通の自主的なルー
ル』として策定・公表」されたものです。
いまだに中小企業の90%が、会社の融資
について経営者の個人保証を行っています
が、これは、次期社長候補が就任に躊躇し
たり、事業に失敗した経営者は全財産を失
うことになるために再挑戦が困難になると
いう課題があります。
そこで、このようなガイドラインを示すこ
とによって、個人保証に頼らない融資が行
われやすくなることが狙いのようです。
ただし、このガイドラインでは、次のよう
な前提が、中小企業に求められています。
(1)法人と個人の分離:役員報酬・賞与
・配当、オーナーへの貸付など、法人と経
営者の間の資金のやりとりを、「社会通念
上適切な範囲」を超えないようにする体制
を整備し、適切な運用を図る。
(2)財務基盤の強化:財務状況や業績の
改善を通じた返済能力の向上に取り組み、
信用力を強化する。
(3)適時適切な情報開示:自社の財務状
況を正確に把握し、金融機関などからの情
報開示要請に応じて、資産負債の状況や事
業計画、業績見通し及びその進捗状況など
の情報を正確かつ丁寧に説明することで、
経営の透明性を確保する。
情報開示は、公認会計士・税理士など外部
専門家による検証結果と合わせた開示が望
ましい。
中小企業経営者の方の中で、これらの前提
を読むと、気が滅入る方が多いのではない
でしょうか?
私も、経営者保証なしで融資を受けられる
状況にある会社は、割合としてはあまり高
くないと感じています。
しかし、私は、その現状が決して望ましく
ないと考えていません。
それはさておき、本題に戻ると、銀行が目
利き能力を発揮しようとしたとき、前述の
ガイドラインの(1)法人と個人の分離、
(3)適時適切な情報開示が行われていな
ければ、発揮は難しいということです。
もちろん、だからといって、銀行は目利き
能力を高めなくてもよいということにはな
りませんが、前述のような状況において、
銀行の目利き能力が高くなりさえすれば、
収益性の低い銀行の収益性が高くなるとい
うことは必ずしも言えないと私は考えてい
ます。
これは、邪推かもしれませんが、実は森長
官は、銀行の批判を通して、真意は融資先
の改善を求めていると、解釈することもで
きます。
いずれにしても、銀行が変わることを求め
られている時代にあっては、融資を受ける
側もそれに応じた対策が必要なことは間違
いないでしょう。
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