私が、事業改善のお手伝いの依頼をされる
とき、その会社の経営者の方に前もって会
社の状況をお尋ねします。
そのとき、「毎月、試算表を作成して、会
社の収支状況を確認していますか?」とお
尋ねすると、多くの方は、「はい、やって
います」と回答されます。
また、「少なくとも、1か月に1回、社内
会議を開いていますか?」、「新たな注文
を受けたとき、採算は十分に検討していま
すか?」、「従業員たちとのコミュニケー
ションを確保していますか?」ときいても
ほぼ同様に「はい、やっています」と回答
されます。
このような回答を受けると、「なぜこれら
のことが実践できているのに、業績が芳し
くないのだろう?」と不思議に感じるので
すが、実際の原因は直に確かめないとわか
らないことが多いので、最初の面談では、
質問をするだけにとどめます。
そこで、例えば「●月●日に、貴社に私が
お伺いしたときに、月次試算表(月次会議
議事録、採算検討表、従業員の方の面談記
録表等)を拝見させてください」というお
願いをしておきます。
ところが、会社に訪問して、前もって提出
をお願いしていたものについて見せていた
だこうとすると、「先月の月次資産表は、
会計事務所の方がまだ持って来ない」、
「月次会議の記録はしていない」、「受注
の採算は、原価以上であれば受けている」
という回答をされることが少なくありませ
ん。
このようなことになるのは、経営者の方と
しては実践していると認識していても、コ
ンサルタントの立場から見れば、実践した
り活用したりしている水準に至っていない
という、認識の差異があることが原因で
しょう。
ここまでの記述では、「やったつもりはよ
くない」ということを指摘しようとしてい
ると受け止める方が多いと思いますが、そ
のことよりも、これとは別の問題の方が大
きい問題であると私は考えています。
例えば、月次試算表の作成については、経
営者の方は、会計事務所に作成してもらえ
ば、それだけで月次試算表を作成している
と認識しているとします。
しかし、当然、それだけでは何の意味もあ
りません。
月次試算表は、少なくとも、前月の収支が
黒字であったか、または、計画通りであっ
たか。
もし、赤字になったり計画との乖離があれ
ば、その原因は何か。
その原因を解消するには、どうすればよい
か。
その改善策は、だれがいつまでに実施する
か、などを検討しなければ、月次試算表を
作成する意味はありません。
ところが、経営者の方が「月次試算表を会
計事務所に作ってもらっているが、何の役
にも立たない」と誤解していれば、月次試
算表の作成は無駄と考えることになってし
まうでしょう。
これとはまったく別のことですが、同様の
誤解についてもよく耳にします。
例えば、ある人が「ブログを書いて、お店
の客数を5倍に増やした」と言っていたと
します。
そして、それを聞いた人が、ブログを書き
始めたものの、その人の経営するお店の客
数は増えなかったとします。
そうすると、その人は、「ブログは集客に
は役に立たないし、集客できると言ってい
る人はでたらめを言っている」と考えるで
しょう。
でも、ブログで集客に成功した人は、1日
にブログを3回書いたり、少なくとも1日
に1回は書いていたりします。
一方で、ブログでの集客に失敗した人は、
1週間に1度しかブログを書いていなかっ
たり、不定期にしか書いていなかったりと
いう状態の方が多いようです。
確かに、週に1度でもブログを書いている
ことに変わりはありませんが、読む人を引
き付ける書き方になっているかという観点
からは、書いていないに等しいことだと思
います。
これは私自身への戒めでもありますが、自
分が効果があると思ってやっていることは
本当に効果があるのか、外部の人、できれ
ば専門の人に見てもらうことが望まれるで
しょう。
派手な改善策よりも、小さなことの改善を
積み重ねることの方が、私は大切であると
考えています。
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