鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

銀行は決算書だけで融資はしないのか

私は、融資を円滑に受けられるようにする

には、決算書のほかに、事業計画書、月次

試算表、資金繰予定表を銀行に提出するよ

うお薦めしています。


これに対して、「税務署は決算書を提出す

るだけですむのに、なぜ、銀行には、ほか

にも資料を作って出さなければならないの

か」という疑問をお持ちになる方もいらっ

しゃると思います。


これは、表面的には、「銀行は決算書以外

に資料を要求することはおかしい」という

意味になりますが、さらに深いところで

は、「税務署へ提出する資料は税理士さん

に依頼するだけですむのだから、銀行も税

理士さんが作成する資料以外には要求しな

いで欲しい」という意味が込められている

と思います。


そのようにお考えの方は、会計については

税理士さんに任せっ放しですむのだから、

銀行が要求する資料を作成することは、単

に負担が増えるだけだと考えておられるの

でしょう。


これについても理解していただける方は多

いと思いますが、決算書は、正確さを欠い

た表現ですが、税金の計算のために作成す

る書類であり、銀行の融資審査で欲しい情

報がすべて載っていません。


また、銀行が要求する資料は、銀行のため

だけでなく、経営者の方がタイムリーに意

思決定を行うために必要な資料であり、そ

れを作成することが負担と感じる経営者の

方は、お金に関する管理をすること自体が

面倒だと感じているのだと思います。


ですから、事業計画書などを銀行から要求

されて、「銀行のために作成する」という

のは本末転倒だと私は考えています。


話を本題に戻すと、銀行は決算書だけで融

資審査ができないのかという疑問について

は、融資審査できるというのが回答です。


ただし、限界があります。


限界があるというのは、決算書だけで融資

判断できるのは、分かりやすく言えば、業

況のよい会社だけです。


これは裏話になりますが、私が銀行で働い

ていたときは、自己資本比率50%、10

年以上継続して黒字を計上している会社に

対しては、ほぼ、その事実だけで融資を即

決していました。


むしろ、銀行の目標達成のためにもう少し

多めに借りてもらえないかと考えていたく

らいです。


しかし、業況があまり芳しくない会社に対

しては、決算書だけでは融資できるかどう

か判断に迷います。


その場合、もう少し詳しい情報があれば、

融資に応じる可能性はあるものの、決算書

だけの情報であれば断るしかないというこ

とになります。


ですから、「銀行は決算書だけで融資はし

ないのか」という質問に、もう少し詳しく

回答すると、「融資審査は可能だが、判断

に迷うものについては断られる可能性が高

い」ということです。


これは上から目線になりますが、「試算表

も提出してください」という銀行からの依

頼は、「決算書からの情報だけでは融資を

断ることになるので、融資を取り上げるた

にも、もう少し詳しい情報をください」と

いう意味でもあります。


これは繰り返しになりますが、月次資産表

などは、経営者自身の正確な意思決定にも

役立つものですので、これらの資料は、銀

行のために作成すると考えず、自らの会社

をよくするために作成し、その資料を銀行

とシェアすると考えるようにすることをお

薦めします。

 

 

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