[要旨]
Googleの元会長のシュミット氏は、エグゼクティブコーチに、自分自身の改善点を指摘してもらっていたそうです。それは、経営者は、会社の情報は把握できるものの、自分自身の改善点は、コーチのような専門家を使わなければ、把握できないという理由によるものです。このような専門家の活用は、自社の事業の基盤の強化のために重要な取組と言えます。
[本文]
今回も、前回に引き続き、エグゼクティブコーチの鈴木義幸さんのご著書、「未来を共創する経営チームをつくる」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。鈴木さんは、Google元会長のエリック・シュミット氏が、エグゼクティブコーチを活用していることを、同書で紹介しておられます。シュミット氏は、2001年にGoogleの会長に就任したとき、当時の別の取締役から、コーチを活用することを薦められたそうです。シュミット氏は、すでに、経営者としての実績があるのに、なぜ、コーチの活用をする必要があるのか、当初は疑問を感じたそうですが、実際に、コーチを受けるようになってから、考え方が変わったそうです。
「CEOは、(飛行機の)コックピットに座って、様々な計器に多くの情報が入ってくるのを見て、(飛行機の操縦をするように)経営の舵取りをします。問題は、会社が大きくなればなるほど、会社に関する多くの情報が、より詳細に、計器によって示される反面、CEO自身についての情報は入りにくくなることです。シュミット氏が、Googleの、いわば創設機に、自身にコーチをつけたことは、彼がGoogleの経営に成功する大きな一助となりました。彼は、その後もずっと続けて、自分自身にコーチをつけたと言われています」(160ページ)
経営トップは、会社の改善点については、常に注視していますが、自分自身の改善点については、なかなか、目が向きません。また、自分自身の改善点を探ろうとしたとしても、ほとんどの人は、自分自身を客観視することはできないでしょう。ですから、コーチに改善できるところを指摘してもらう意味が大きいのでしょう。そして、経営トップのような立場にいる人は、もともと能力が高いとはいえ、さらに改善点が改善できれば、そのポジションから鑑みて、会社の業績の改善に与える影響も、より大きなものとなるでしょう。ちなみに、私は、経営者の方が改善点を指摘してもらう相手は、エグゼクティブコーチに限らなくてもよいと思っています。
米国では、プロ投資家に株主になってもらい、その投資家から、助言(この助言は、経営者自身の改善点だけに限らないと思いますが)をもらうことは珍しくないそうです。日本の中小企業も、顧問税理士、経営コンサルタント、融資を受けている銀行などから、部外者の視点で気づいたことを指摘してもらうだけでも有用だと思います。中には、耳の痛いことを言われるのは気が進まないという方もいると思いますが、経営者が独善的になることを防ぐ面で、外部の方の意見に耳を傾けることは大切だと思います。経営者の方が、このような姿勢を持つことは、経営者の方が裸の王様にならず、健全に会社が発展していくための重要な要素となるでしょう。
2022/9/6 No.2092