鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

社外の情報は社長以外も得る機会が大切

[要旨]

社長は会社の業績を高めようとして、社外で得た情報を事業に活用しようとします。しかし、社長以外は、社外の情報に触れる機会が相対的に少ないので、社外の情報を社長から受動的に受け入れることになります。そこで、役員、従業員にも、社外の情報を得る機会を増やすなどの体制整備が重要です。


[本文]

今回も、前回に引き続き、エグゼクティブコーチの鈴木義幸さんのご著書、「未来を共創する経営チームをつくる」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。鈴木さんは、会社の役職員が、「外とつながること」が重要だと述べておられます。というのも、ひとつの自社だけで仕事をしていると、見識が狭まってしまう可能性があるからで、これについては理解は容易でしょう。

したがって、自社の従業員同士ばかりと接触を持つのではなく、他の業界の人たちともネットワークを広げることは重要です。しかし、そのような外とのつながりを持つことについて、鈴木さんは、ひとつの失敗事例を挙げておられます。「一般論ですが、ときに、経営チームの中で、トップである社長だけが、外とのつながりを強く持ち、新しい情報に積極的に触れているようなケースがあります。

各役員は、各部門の執行責任者として忙しい一方、社長は特定の執行部門のオペレーションをしているわけではないので、時間があって、だから、どんどん、外に出て行けるのです。そうなると、社長は外で仕入れた情報をどんどん社内に持ち込み、あれをやろう、これをやろうとなります。役員は、社長に反論をしづらく、それを、ただ、受け身で聞くだけになります。社長と役員には情報格差がありますから、なおさら受け身になります。意見のぶつかり合いは起こらず、役員の中に、“聞かされ感”、“やらされ感”ばかりが漂うことになってしまう-そんなケースです」(177ページ)

社長は、会社をよりよくしようと考え、よい情報を会社に持ち込もうとしているわけですが、情報量の差が、社長と役員の間で大きくなることによって、情報は一方通行になってしまいます。そのことが、役員たちのモラールを下げ、組織に悪い影響を与えることになります。したがって、社長は、部下たちにも社外の情報を得る機会を与えるような配慮をすることが必要だと思います。例えば、ある会社では、従業員の方が受講したいと希望する外部研修を、月に一度、会社の費用負担で受講することを認めているそうです。

このような研修については、「仕事にどれくらい活用できるのか、効果をあまり期待できない」と考える経営者の方も少なくないと思います。でも、従業員に希望する外部研修を受けさせることは、会社が従業員たちへの人材投資を惜しまないという姿勢を見せることになります。したがって、直接的な効果は見えにくいものの、外部情報を得る機会を増やすとともに、モラールを高めることになります。

また、前述のように、社外の情報は社長だけが集めればよいというものではなく、部下たちも自ら収集できるようにしていなければ、「社内での対話」ができなくなり、組織的な活動を妨げることになります。ただ、このような体制をとっていると、すぐに成果が欲しい経営者にとっては、まわりくどいことをしていると感じるかもしれません。確かに、機動性は、トップダウンで指示が行われる会社、すなわち“ワンマン社長”の経営する会社の方が高いでしょう。でも、ワンマン経営では、当然、組織的な活動はできません。やはり、組織的な活動で業績を高めたいと考える経営者の方は、機動性の面は、少し譲らざるを得ないでしょう。

2022/9/5 No.2091