鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

共創できない原因は他人への負い目

[要旨]

共創できるチームになるには、メンバー同士で、お互いに貸しを作りたくないという変なプライドを取り除き、お互いに気軽に協力できる雰囲気を作ることが大切です。ただ、これは、頭で理解できても、感情の問題から、直ちに改善できないことから、時間をかけて働きかけることが必要です。


[本文]

今回も、前回に引き続き、エグゼクティブコーチの鈴木義幸さんのご著書、「未来を共創する経営チームをつくる」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、役員たちが、自分の担当の目標だけでなく、会社全体の目標も意識して活動すれば、組織的な活動が行われるようになり、組織としての業績は、役員全員の業績の総和を超えるものになるけれども、なかなかそれが実践されないということを説明しました。鈴木さんは、このような状況を改善するための手法として、ある外資系企業の事例を同書で紹介しています。

「(CEOからの要請を受け)CEOとバイスプレジデント11人全員を集めて、半日のワークショップを実施しました。(中略)そして、この“チームの現状”はどうかということについて議論をしました。(中略)最初は、次のような否定的な意見が噴出しました。『そもそも、休みの日にこんなことをやって、意味があるのか?』『事業責任者は、それぞれの事業目標に責任を持ち、それを達成することが最大の任務でしょう?』『自分の責任を果たすことで精いっぱい、とても他部門に意識を向ける余裕など…』(中略)(これに対し、私は)彼らが、“止まって観て”、“内省し”、“これまでの当たり前を検証する”ことができるように、ワークショップのファシリテーターとして、ただ、『こういう状況になっている本当の理由は何でしょうか?』と、問いを投げ続けました。

そうすると、だんだんと、次のような意見が出始めました。『会議で他人に突っ込みを入れると、その後に、自分が突っ込まれるのではと思ってしまう』『自分の目標を達成できないと、周りから白い目で見られるのではないかと思っていた』『前のCEOの方針は、“それぞれが自分の役割を果たせ”だったし、自分も、当然、そういうものだと思ってきた』(このように)ワークショップを進めるうちに、他部門に口を出させない表面的な理由と、少し深いところにある理由は、どうも違うようだ-ということが、それぞれの中で認識されてきました」(67ページ)

ちなみに、これらの具体的な改善策として、鈴木さんは、「(1)他のメンバーの発表に対して躊躇なく自分意見を述べる、(2)自分の経験を他のメンバーに積極的にシェアし、彼らの目標達成のために協力する、(3)自分が悩んだときは、他のメンバーに助言を求める」などを目標として設定してもらったそうです。そして、バイスプレジデントたちが、これらの目標の実現に向けて活動して行った結果、1年後に、CEOの満足するような、“共創を起こすチーム”が実現したそうです。この、鈴木さんの提案した改善策については、それほど理解がむずかしいことではないと思います。

ところが、ワークショップで出た意見のように、メンバーが他のメンバーに頼ろうとすることに負い目に感じる状態にあったことが、改善を難しくしているようです。したがって、バイスプレジデントの、「他人に貸しを作りたくない」という、ちょっとした「プライド」を取り除くことが、共創しない状態を改善するためのポイントになると言えます。ただ、これについても、バイスプレジデントたちは頭で理解できても、感情の問題から、すぐには実践できないということも現実でしょう。ですから、前述の事例でも、1年を要することになったのだと思います。そこで、CEOは、それを見越して、我慢強く働きかけを行うことが大切になると言えるでしょう。

2022/8/27 No.2082