鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

アカウンタビリティーと当事者意識

[要旨]

ある電機メーカーは、CEOが経営会議の場で役員たちに言いたいとを言ってもらうことで、参加者の当事者意識を高めたことから、業績を回復することができました。もちろん、組織の構成員全員の当事者意識を高めることは、容易なことではありませんが、それに成功すれば、組織としての成果も大きなものとなります。


[本文]

今回も、前回に引き続き、エグゼクティブコーチの鈴木義幸さんのご著書、「未来を共創する経営チームをつくる」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。鈴木さんは、コロナ禍のような難局においいては、チーム力が大切であり、そのチーム力が発揮されるためには、アカウンタビリティーが大切だと説明しておられます。「以前、日本を代表する電機メーカーが苦境に喘いでいるときに、CEOに就任したA氏に、インタビューをしたことがあります。(中略)『トップとして何をいちばん大事にしていますか』という問いに、『それはひとつしかない。

言いたいことがあれば、経営会議の場ですべていうこと。後になって、“本当は、あの時、俺は、こう思っていたんだ”はなし。そして、一度決めたら、全員でそのことにコミットすることです』と答えてくれました。この会社は、複数の事業を有するコングロマリット経営をしています。お互いの利害がぶつかるもこともあるし、危機を乗り越えようとしても、呉越同舟になりかねない。だから、A氏は、『責任は全員にあり、誰一人、チームの決定に対して当事者意識を失うことは許されない』と、言ったわけです。その後、この会社はV字回復を遂げ、今も日本を代表する企業として輝きを放っています」(250ページ)

鈴木さんは、別のところで、コロナ禍が原因で業績が下がった会社はたくさんあるものの、経営環境に原因があると受け止めるか、それとも、自社の経営環境の変化への対応力が不足していたと受け止めるかによって、チーム力に大きな差が出ると述べておられます。そして、この結果責任を負うことを、「アカウンタビリティーを果たす」ことであると、鈴木さんは述べておられます。鈴木さんのご指摘するように、役員や従業員の全員が、当事者意識を持つことによって、会社の業績が高まるということは、容易に理解できると思います。

その一方で、役員、従業員の全員に、強い当事者意識を持ってもらうことは難しいと考える方は、多いと思います。もちろん、鈴木さんが事例にあげている会社のCEOも、単に、役員たちに対して、当事者意識を持てとは言っているだけではありません。「言いたいことがあれば、経営会議の場で言ってもらう」という方針をとっており、これは、そのCEO自身も、経営会議の場で、自分の考えを納得してもらえよう、役員たちに丁寧に説明をしているということでしょう。

このような方針を取ることは、経営者の大きな労力が必要になります。だからと言って、当事者意識を高めることを諦め、上意下達で事業活動を続けることは、21世紀らしい経営とは言えないでしょう。現在は、経営者として、組織に対して効果的な働きかけができるかどうかが、会社の業績の差となって表われていると言えるでしょう。これも繰り返しお伝えしていることですが、現在は、会社がどういう戦略をとるかという前に、組織をどう強くするかという点が、重要性を増しています。

2022/9/8 No.2094