[要旨]
問題解決の場である会議では、客観的な視点で問題の原因を分析し、当事者意識をもって解決策を考えなければなりません。しかし、解決策を考えるときも、外部観察者の視点のままでいる人が多いので、会議の参加者は、自らが問題の一部になっているということを認識しなければなりません。
[本文]
今回も、前回に引き続き、エグゼクティブコーチの鈴木義幸さんのご著書、「未来を共創する経営チームをつくる」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。鈴木さんは、会議をよいものとするためのポイントとして、2つの視点が大切と述べておられます。「問題解決の場である会議に、どういうスタンスで臨むことが有効かを提示したいと思います。それは、一言で言うと、“外部観察者”と“内部参加者”-この2つの視点を合わせ持って会議に臨むことが大事であるということです。“外部観察者の視点”というのは、事物を外側から観察して観る視点です。
経営者は、日々アップデートされる、様々な客観的情報をもとに、対象となる事案を俯瞰し、さらに分析し、状況を理解していく能力が求められますが、その際、視点は事案の外側にあります。(中略)しかし、外側から観ているだけでは、ただ百花繚乱、様々な意見が出るだけで、結論を出すことが難しくなります。何よりも、語っている経営メンバー自身が“問題の一部”であるわけです。(中略)『あなたが問題の一部でなければ、解決策の一部たりえない』という言葉が示すように、外側からだけ観ることの問題は、そこでは全員が他人事であるということです。
どんな問題も、“会社の一員、経営チームの一員である自分が、それを生み出すに至った一端を担っている”という立場で観る必要があります。(中略)会議に参加するメンバーは、『会社は…』『社員は…』『あの部門は…』などと、三人称で語るだけでなく、『私は、こういうことをする必要がある』と一人称で話す必要があります」(141ページ)鈴木さんのご指摘は、現状分析は、客観的でなければならないものの、解決策を考えるときは、当事者の視点を持たなければならないということであり、このことは、言うまでもないことです。
しかし、鈴木さんがこのような指摘をするということは、解決策を考えるときも、外部観察者のままでいる人が多いという現実があるからでしょう。かつて、サラリーマン川柳で、「コストダウン さけぶあんたが コスト高」という作品が1位になったことがありますが、そういう人がいるのは、日本では日常的なことなのでしょう。そして、内部参加者の視点は、経営トップこそが率先垂範して見せなけれ、部下たちに持ってもらうことは難しいでしょう。
2022/9/2 No.2088