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スーパーマーケットの成城石井は、自社の看板商品であるチーズケーキなどを製造するために、約66億円の工場を新設しました。現在は、このように、小売業の会社が自ら商品を開発、製造しなければ、競争力のある商品を販売できなくなっており、これからは、小売業者同士の競合ではなく、サプライチェーン同士の競合が行われる時代になっているとも言えます。
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先日、日経MJに、スーパーマーケットの成城石井と紀伊国屋に関する記事が載っていました。この記事によれば、両社の成功事例を紹介し、「製造小売業(SPA)を進化させた『製造業型』経営がスーパーの勝ちパターンの1つとなりつつある」そうです。このうち、成城石井は、「自社開発の商品を製造する工場、『大和第3セントラルキッチン』(神奈川県大和市)を、約66億円投じて新設、8月に、本格稼働を始めた。延べ床面積約1万平方メートルは、既存の東京都町田市の2工場の合計の1.8倍。新工場では、ピザや自家製麺、ホールケーキなど、新たなメニューも手掛け、2022年度は、100品目以上の新商品を開発する方針」であり、製パン業に経営多角化(垂直的多角化)をしているような状況です。
このことは、同時に、スーパーマーケットは、小売業ではなくなりつつあり、サプライチェーン(供給連鎖)そのものを構築していると言えます。したがって、これからは、小売業同士での競争ではなく、サプライチェーン同士での競争として事業をとらえなければならないでしょう。では、なぜ、小売業であったスーパーマーケットが、サプライチェーンの構築をすることになったのかと言えば、他社との競合に勝つためには、より魅力的な商品を販売する必要があるからでしょう。
成城石井の場合、同社のチーズケーキや、ピザ、ホールケーキを開発、製造、販売するために、新たに工場を建てたわけですが、それは、他社に任せるのではなく、自ら開発、製造を行わなければならないほど、商品の競争力が問われるものだと思います。すなわち、自社開発しなければ他者との競合に優位に立つことができないほど、現在は、商品の競争力が重要になっているということです。このことは、裏を返せば、価格では勝つことができなくても、商品の競争力が高ければ、中小企業も大きな会社との競合に勝てる時代になっていることでもあると、私は考えています。
2022/9/9 No.2095