鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

対立は創造のための手段

[要旨]

一般的には、対立は避けるべきものと考えられがちですが、成熟度の高い会社では、“対立は創造のための手段”と認識されています。したがって、時間はかかるものの、役職員の間で忌憚のない意見を出し合える環境を整え、よりブラッシュアップされたアイディアを生み出せるような体制をつくることが大切です。


[本文]

今回も、前回に引き続き、エグゼクティブコーチの鈴木義幸さんのご著書、「未来を共創する経営チームをつくる」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。日本では、対立することは避けなければならないことと考えられがちですが、鈴木さんは、成熟度の高い会社では、“対立は創造のための手段”と認識されていると述べておられます。

「あるコンサルティング会社は、長年、オーナーの強いリーダーシップで運営されてきました。しかし、『このままでは、自分の器以上の会社になることはできない』と危機感を抱いたオーナーは、エグゼクティブコーチを受け、リーダーを開発することに着手しました。同社がリーダー開発に着手したのは2010年だったのですが、私(鈴木義幸さん)がオーナーのコーチを担当しました。そして、先日、久しぶりにその社長と話をする機会がありました。『2010年は、自分にとって大きな転換点でした。それまでは、すべて自分が考え、自分の考えに全員を、“右にならえ”させてきました。

しかし、2010年以来、リーダーをつくるために、高いメンバーシップフィーを払って、リゾート型ホテルを使えるようにし、毎週土曜日に、そこにリーダー候補を連れて行き、議論を交わしました。最も教えたかったのは、対立を恐れるな、ということです。だから、自分も一切手加減せずに言いましたし、彼らにも、自分に対して言わせました。やがて、どこからでも対立の狼煙が上がるようになるまでに10年かかりましたが、決して無駄ではない10年でした』その会社は、数年前に上場し、現在、初値の時価総額の数十倍もの企業価値を有するまでになりました」(135ページ)

鈴木さんが例に挙げたコンサルティング会社のように、オーナー経営者の考えを、部下たちが従順に実行することで、事業が拡大する例は珍しくありません。しかし、それは、オーナー個人の技量で事業が拡大している状態なので、オーナーが退任すれば、事業もそこで成長が止まることになってしまいます。また、事例の会社のオーナーが述べておられるように、オーナーの限界が会社の限界にもなってしまいます。そこで、より、高い成長を目指すためには、オーナー以上の優れた意思決定を行うことができるリーダーたちを育成する必要があるわけです。

そのひとつの方法が、オーナーと対立する意見を、あえて本気で出してもらうことで、より多面的で、かつ、整合性の高い意思決定を行える体制をつくり、その経験を積んでもらうことなのだと思います。さらに、これは少し非論理的ですが、カリスマ的な経営者が、ひとりでアイディアを出すよりも、複数の人の間でのブラッシュアップを経てできたアイディアの方が、より優れたものになるというのは、それほど不思議なことではないでしょう。さらに、社長から一方的に伝えられた方針を受動的に実行するより、自ら決定に加わった方針であれば、能動的に取り組むことができるようになります。

2022/9/1 No.2087