鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

ファンドマネージャーに怒る経営者

[要旨]

ファンドから出資を受けている会社経営者の中には、ファンドマネージャーからの質問に、怒り出すことがありますが、そのような経営者は支援を受けにくくなります。経営者も生身の人間なので、感情的になることがあるとはいえ、自社の事業を発展させるためには、多くのステークホルダーと冷静に接することができるようにすることが大切です。


[本文]

ファンドマネージャー藤野英人さんのご著書、「5700人の社長と会ったカリスマファンドマネジャーが明かす儲かる会社つぶれる会社の法則」を読みました。同書の中で、藤野さんは、質問をすると怒り出す社長について述べておられます。「上場企業の社長や、これから上場しようとする会社の社長は、私のような投資家からインタビューを受ける機会が少なくありません。(中略)こういった場面で、投資家からの質問に対して怒り出す社長の会社は、実は、経営状態がよくないのかもしれないと疑ってかかる必要があります。

社長が怒り出すのは、投資家側が厳しい質問をし、時にはプライドを傷つけるような言葉をぶつけることも、少なくないからです。私はどんな社長にも、敬意を持って接するよう心がけていますが、中には、わざと、『こんなにひどいバランスシートで、よく上場する気になりましたね』などと言う投資家もいます。本気でこうしたコメントをしている場合もありますが、実は、社長をわざと怒らせることで、本音を引き出すことが狙いであったりするのです。

手厳しいことを言われてすぐ怒り出すということは、普段は、イエスマンに囲まれているか、あるいは、実際に痛いところを突かれた狼狽が怒りに変わっているか、いずれにしても、あまり好ましい反応とは言えないでしょう。もし、自分の会社経営に絶対の自信があり、成長を確信していれば、厳しい質問をされても笑って受け流せるはずです。たとえ、耳に痛い言葉だったとしても、それを受け止めて、改善に活かせるくらいの器を持った経営者でなければ、なかなか、その会社に投資したいとは思えません」(57ページ)

この藤野さんのご指摘は、ほとんどの方がご理解されるでしょう。そして、私のような途上にあるものは、経営者の方に、「投資家から厳しい質問をされても、冷静に応対しましょう」などと述べることができる立場にはありません。しかし、私が銀行に勤務していた時、融資を受けていた会社の経営者の方の、7割から8割の方は、怒りっぽかったという印象を持っています。当時、若かった私は、委縮しながら経営者の方たちと接していました。(おかげで、いまは、ほとんどの経営者の方と会っても、緊張しなくてすむようになりました)

そして、若い銀行職員に高圧的な態度で接している経営者の方を見て、私に対しては高圧的になっているものの、心の中では、銀行から融資を断られないようにするために、必死なのだろうと想像していました。さらに、私のようなサラリーマンではなく、自分の能力だけを頼りに、会社を切り盛りしている経営者の方の立場の厳しさを察していました。しかし、銀行や投資家など、資金の提供者にも、その立場があります。資金の提供者に怒ることは、あまり賢明ではありません。

きちんと、リスクの少ない相手であることが確認できなければ、資金を提供しようという判断をすることはできないからです。また、ビジネスでは、資金の提供を受ける相手だけでなく、顧客、仕入相手、従業員など、さまざまなステークホルダーと折衝する必要があります。そのような人たちと、冷静に接して、相手が欲する情報を提供することが、会社の事業を効率的に発展することができるということを、藤野さんの指摘を読んで、改めて感じました。

2022/8/19 No.2074