鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

偽りの自分で生きていると成功しない

[要旨]

経営者であっても生身の人間であるので、どうしても劣等感を持つことを避けることができず、表面的には従業員の方が働きやすい職場をつくりたいなどと口にする一方で、他の人から尊敬を得たいという欲求を持ってしまいます。このような欲求は、事業活動の発展に悪い影響を与えるので、経営者の方は心の鍛錬をすることが望まれます。


[本文]

エグゼクティブコーチの秋山ジョー賢司さんのご著書、「不安が覚悟に変わる心を鍛える技術」を読みました。秋山さんは、かつての秋山さんもそうだったとしたうえで、ビジネスパーソンの中には、偽りの自分で生きている人がいるとご指摘しておられます。偽りの自分とは、英国の精神科医ウィニコットが発見した概念で、真実の自分を隠蔽する、防衛的な機能を持った構造のことだそうです。

具体的には、例えば、「社員が生き生きと働く会社をつくりたい」といった理想を掲げて独立したけれども、その裏には「経営者としてみんなから尊敬されたい」といった隠れた願いがあるというような場合、その人は、偽りの自分で生きているということになるようです。

秋山さんの本には、この偽りの自分のしくみや原因、解決方法などが詳しく書かれているのですが、経営者の方が劣等感を埋めるために、表向きに公言していることと、実際の行動にギャップがあるということは、多くの方が経験的に理解していると思います。その一方で、経営者の方も生身の人間なので、劣等感を完全になくすことは不可能ですので、多少の裏表があることは避けれません。ただ、経営者の方に、表と裏の差が大きすぎると、事業経営に悪影響が出てしまいます。

また、近年は、経営者の能力の差が業績の差となって表われやすくなっているので、「自分を偽らない」経営者の方が、ライバルとの差をさらに広げることになります。したがって、自らが経営者を務めようとする方は、なるべく早い段階から、自分を偽らないよう、心を鍛錬しておくことが望ましいと考えます。少なくとも、「社長」という肩書を求めることたけを目的にするような、自分の劣等感を埋めることを目的として起業することは避けましょう。

2022/8/18 No.2073