鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

ベンチャーキャピタルは労力がかかる?

[要旨]

ベンチャーキャピタルから資金提供を受けた会社は、株主であるVCへの対応にアカウンタビリティを果たすため、ある程度の労力が必要です。しかし、VCは、銀行と異なり、会社の株主、すなわち、当事者として銀行より強力に協力をしてくれます。


[本文]

経営コンサルタントの小島幹登さんのポッドキャスト番組を聴きました。小島さんによれば、小島さんは、かつて、ご自身が経営しておられた会社に、ベンチャーキャピタルから出資を受けていたそうです。その時は、会社の業況については、逐次、株主であるベンチャーキャピタルに報告しなければならず、また、新たなことをしようとするときもベンチャーキャピタルの合意を得なければならなかったそうです。そのため、ベンチャーキャピタルへの対応に大きな労力が必要となり、小島さんは、会社の経営に集中できなかったそうです。

そこで、小島さんは、資金調達は銀行融資をお薦めするとお話しておられました。私は、ベンチャーキャピタルと関わった経験はありませんが、かつて、事業再生に携わった際に、再生会社に対するファンド会社のモニタリングを見たことがあります。ファンド会社は、出資先の会社に対する再生計画の進捗度合いを、毎月、確認しますが、計画との乖離があると、それへの対応を厳しく求めていました。ですから、小島さんの気持ちもよく理解できます。

しかし、だからといって、資金調達の方法は銀行融資が優れているのかというと、そうではないと、私は考えています。銀行が融資を行うときは、ある程度、業況をきいたり、条件を出したりしますが、ベンチャーキャピタルほど厳しい追及はしません。でも、銀行は、会社の業績が悪化すると、新たな融資に応じなかったり、融資を回収しようとします。これは、銀行は、融資相手の会社から見れば、「部外者」だからです。

一方、ベンチャーキャピタルは、会社からみれば株主であり、すなわち、会社の「当事者」です。ですから、会社の業績が悪化したからといって、原則として「出資金を返せ」とは言いません。したがって、ベンチャーキャピタルが「うるさい」のには理由があるのであり、ベンチャーキャピタルと銀行融資の間では、どちらかが優れていてどちらかが劣っているわけでははないと、私は考えています。

ただ、日本の地域金融機関は、実質的に中小企業にとって株主的な役割を担っている面もあります。いわゆる、リレーションシップバンキングです。そして、中小企業経営者にとっては面倒と感じられることがあるかもしれませんが、銀行から力強い支援を受けようとするためには、それなりの説明を行ったり、質問に答えたりしなければなりません。当然のことですが、アカウンタビリティなしには、資金提供者からの協力も得られません。

2022/2/5 No.1879

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