鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

自分がいなければ成功しなかった事業

[要旨]

はやぶさ2のプロジェクトは、チームワークを重視しており、メンバー全員が、「自分がいなければ成功しなかった」と思える組織になっているそうです。このような体制を整えることにより、解決困難な課題に直面しても、各メンバーが高い当事者意識をもって解決に臨むことができ、プロジェクトの成功につながったようです。


[本文]

JAXA名誉教授で、はやぶさプロジェクトのメンバーだった、的川泰宣さんが監修された、「『はやぶさ2』のはるかな旅-史上初の挑戦とチームワーク」を読みました。「2019年11月13日、はやぶさ2はたくさんの科学成果をたずさえて、リュウグウを後にしました。ちょうどそのころでしょうか?あるメンバーが、ふと、つぶやいたひとことが、私の心に深く残っています。-はやぶさ2は、みんなが『自分がいなければ成功しなかった』と思えるプロジェクトだよなぁ-プロジェクトマネージャーという立場にいた私にとって、これほどうれしい言葉はありません。

メンバー一人ひとりが、『自分ががんばったから成功したんだ』、『おれがいなきゃできなかった』と思ってくれているのは、本当にすばらしいことです。プロジェクトマネージャーは、チームのリーダーです。しかし、一口にリーダーと言っても、いろいろなタイプがあると思います。はやぶさ2におけるリーダーは、『答えはこっちにあるから、みんなついて来い』と、ぐいぐい引っ張る役割ではない-そう思いながら、私はプロジェクトを進めてきました。

答えがどこにあるかわからないのだから、チーム総員600人のうち、だれがいちばん答えに近いかは、やってみなきゃわからない。だからこそ各々が、積極的に安心してチャレンジできる場をつくる。あるいは『君たちが組めば答えに近づけるんじゃないの?』といった風に、人と人をつないで、一緒に問題を考える。それにみんなが応えてくれた結果が、はやぶさ2の『100点満点で1万点』の大成功に結びついたのだと思います」

これは、はやぶさ2プロジェクトのプロジェクトリーダーの津田雄一さんの言葉のようですが、的川さんも、日本の宇宙開発に携わる人は、組織活動を大切にしているとお話しておられました。具体的には、トラブルなどが起きたときのシミュレーションを、何度も行い、チームワークの醸成をしているそうです。このような訓練を重ねることで、メンバーの参画意識が高まり、「自分がいなければ成功しなかった」と思えるようになって行くのだと思います。

また、的川さんたちは、このような価値観を重視しているから、同書の副題に、「史上初の挑戦とチームワーク」とつけたのでしょう。私は、このような科学的なプロジェクトは門外漢ですが、単に、優れた科学的技術だけではなく、メンバーの組織的な活動が成功の大きな要因だとわかり、マネジメントの重要性を改めて認識しました。そして、当然のことながら、この考え方は、ビジネスにもあてはまると思います。

2022/2/6 No.1880

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