[要旨]
天丼天やは根強い人気で業績を回復していますが、それは、かつて、高級料理であった天丼を、習熟度の低い従業員でも、味を落とさず、低価格で提供できるしくみをつくったことが要因と言えます。したがって、これからは、事業展開の方法だけに着眼していては、自社の競争力を高めることは困難と言えるでしょう。
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経営コンサルタントの高井尚之さんが、天丼天やに関する記事を、東洋経済オンラインへ寄稿していました。天やは、「最初に緊急事態宣言が発令された2020年4月の既存店売上高は、対前年比58.1%に落ち込んだが、その後は回復、今年度の業績は好調で、上半期(2022年1~6月)の既存店売上高は、対前年比売上高107.9%」となっているそうです。こういった、天やの根強い人気は、「味へのこだわり」と、高井さんは述べておられます。
しかし、単に、味がよいというだけではなく、かつては高級料理だった天丼を、低価格で提供できるしくみがあるから、天やは高い競争力を持っているといえそうです。「(天やの創業者の)マクドナルド出身の岩下氏は、知人を通じてコンピューター制御の『コンベア式フライヤー』を開発したことにより、訓練を受ければアルバイトの従業員でも調理できるようになり、低価格も実現した」そうです。こういった、「しくみ」で競争力を高める手法は、天やだけでなく、サイゼリヤ、ニトリ、ユニクロ、マクドナルド、丸亀製麺などと共通しています。
一見すると、天丼天やは、天丼専門店に見えますが、高級料理であった天丼を、習熟度の低い従業員でも味を落とさずに低価格で提供できるしくみの巧緻さで業績を回復させていると言えます。そこで、経営者の最大の役割は、競争力の高いしくみをつくることと言えます。そして、それは一朝一夕でつくることもできないものです。少なくとも、これからは、どう事業を展開するかという狭い範囲だけに経営者が着眼していては、競争力を高めることはできないでしょう。
2022/8/17 No.2072