[要旨]
会議の場では、組織の習熟度が低いと、エゴのぶつけ合いの場になりますが、習熟度が高まっていくと、お互いの対立点から、組織を俯瞰した新たな意思決定が行われるようになります。このような、全体最適の意思決定が行われるようになると、会議の参加者は能動的になるので、組織的な活動ができるようになります。
[本文]
今回も、前回に引き続き、エグゼクティブコーチの鈴木義幸さんのご著書、「未来を共創する経営チームをつくる」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、事業活動の現場では、コミュニケーションの確保が後回しにされる傾向にあるので、事業部にまたがったプロジェクトを実施するなどして、従業員同士のコミュニケーションを行わなければならないような機会をつくることが有効であるということを述べました。
今回は、どのようなコミュニケーションを行なうことが望ましいのかということについて説明します。鈴木さんは、コミュニケーションにおいては、対立を活かすことが大切であると述べておられます。「対立をまったく扱えない“エゴのぶつかり合い”の段階から、次の段階に移ると、チームとしての目標が強く共有されるようになります。意識は、“自分”より“チーム”に向かいます。
そこでは、意見の対立が起こったとしても、それは“おたがいの違い”として意識されます。そのようなチームの中では、“相手との違い”は、“自分の意見への新しい視点”と捉えられます。おたがいが相手との違いから、新しい視点を学び、その視点を自分の中に取り入れながら、アイディアをバージョンアップさせていく、そうすると、螺旋階段的にアイディアの質が高まります。一見、同じところを辿るよういながら、しっかりと上に向かっていきます。
さらには、おたがいが違いを認識し、それを次の“2人の意見”にどう取り入れるかを認識しながら昇華させているので、双方の納得感が高くなります。そうやって最終的にできあがったものは、どちらかが考えたものではなく、2人で考えたものになり、実行に移される可能性も高くなります」(132ページ)成熟度の低い組織では、会議では、エゴのぶつけ合い、すなわち、部分最適の視点での議論が中心になります。しかし、習熟度が高くなると、引用した事例のように、全体最適の視点で結論を導くことができるようになります。
では、どうすれば習熟度を高めることができるのかということは、今回は割愛しますが、少なくとも、会議などの場で意見を出し合わなければ、全体最適の視点からの結論を出すまでに至らないということが理解できると思います。中小企業経営者の多くは、「机に座って議論しているくらいなら、現場に出て動く方が業績につながる」と考えがちですが、従業員の方に、全体最適の視点を持って組織的な活動をしてもらうためには、議論すること、そして、組織の習熟度を高めることといったプロセスを欠かすことはできません。
2022/8/30 No.2085