鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

共通のフレーズで判断基準を明確にする

[要旨]

「それはお客さまのためになっていますか?」などの「共通のフレーズ」をつくることで、会社内の判断基準が明確になり、事業活動が迅速化します。このことは、顧客からの支持を得ることにつながり競争力が高まります。ただし、これが機能するようにするためには、権限委譲をしたり、従業員の習熟度を高めたりするなどの、体制構築が必要になります。


[本文]

今回も、前回に引き続き、山田修さんらのご著書、「プロフェッショナルリーダーの教科書」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。経営プロコーチの池本克之さんは、会社内で判断基準を明確にすることをお薦めしておられます。「目標と目的を決めたら、次は、『共通のフレーズ』が必要になります。これがあると、自分たちの判断基準を1つにできるのです。

たとえば、通販でお客さまから問い合わせがあり、電話を受けた社員が何かしらの判断を求められる場面を考えてみます。私は、オペレーターに対しては、ただ1つ、『それはお客さまのためになっていますか?』という判断基準を与えていました。会社の判断基準が1つであると、その場で誰が答えても同じ答えになります。しかし、そこが曖昧で、『ちょっとわからないので、上司にきいて、折り返し電話します』という対応をしていれば、お客さまがどんどん逃げてしまう。(中略)

私が社長をしていたときには、いかにスピードを上げても、朝一でかかってきた電話のクレームが、私のところに届くのは昼過ぎです。(中略)『お客さまからこんなことで困っていますとの電話がありましたが、代わりの商品をお届けしてもいいでしょうか?』と、社長が訊かれても、それはいいに決まっています。だったら、電話を受けたその人が、『すぐ送ります』と答えたほうがずっといい」(100ページ)

この池本さんのご指摘は、ほとんどの方がご賛同されると思いますが、頭で考えるほど実践することは容易ではないようです。その原因の1つは、経営者の方が、会社のことは自分で決めたいと考えたり、また、部下が間違った判断することを恐れたりするからでしょう。もう1つは、部下が、自ら判断することを避けようとすることです。これは、判断することは責任をともなうので、その責任を負いたくないと考えるからです。

したがって、「共通のフレーズをつくって判断基準を明確にする」だけでは、判断基準を明確にする効果を得ることはできません。では、どうすれば、経営者が部下に権限を委譲したり、部下が能動的に判断を行なえるようになるのかということについての説明は割愛しますが、そこに組織づくりの難しさがあるのだと思います。しかし、それを実践できれば強い組織となり、ライバルとの競合に優位に立つことができるようになります。そして、それを実現できる能力が、経営者に問われるものだと思います。

2022/7/4 No.2028