鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

人を人として見るシンプルな接し方

[要旨]

会社の中では、部下や同僚を、会社の中だけでの関係、すなわち、公式組織だけの関係で接してしまうと、組織活動がぎこちなくなってしまいます。人は、職場に所属する前に、感情をもった生身の人間であるので、公式組織としてだけではなく、人間的な関係を深めることが、特にリーダーにとっては大切です。


[本文]

今回も、前回に引き続き、山田修さんらのご著書、「プロフェッショナルリーダーの教科書」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。同書の執筆陣の1人である、経営プロコーチの池本克之さんは、「人を人として見る社風を作ることが大切だ」と述べておられます。「人は誰でも、向上心があり、楽しい、うれしいと感じます。そして、苦しんだり、怒ったり、悲しんだりもします。まず、『他の人も自分と同じ人なんだ』という感覚をもつことが大切です。

これは誰もが心の中にもっている感覚ですが、現実には、立場や経験が邪魔をして、人を人として見るというシンプルで基本的なことができていないことが、多々、あるのです。例えば(中略)、自分にとってこの人がいると不都合だ、嫌なやつだな、邪魔なやつだな、などと思っていませんか?その人のことを悪く言っているときは、その人のことを人として見ていないのです。(中略)

また、人間関係は対立するだけでなく、なあなあの関係になっているのも問題です。(中略)会社では上司と部下でも、仕事が終わると、友人として、毎晩、飲みに行っている関係で考えてみましょう。それ自体は別に構わないのですが、他の社員の目には、『どんな提案をしても、結局は、あの2人が飲んでいるときに(会社の重要な方針を)決めてしまうので、何を言っても無駄だ』と映ってしまいます」(103ページ)

会社組織を含めた組織には、公式組織と非公式組織があることは、よく知られています。公式組織は、いわゆる組織図にある関係で、会社のなかで、何部の何課に所属しているかという会社と個人の関係や、部長は課長の上司であり、係長は課長の部下であるという関係です。そして、職場を離れたとき、上司や部下の関係ではなく、仲の良い人同士として飲みにいったり、休日にいっしょにスポーツをしたりする関係は、非公式組織です。

この、非公式組織は、公式組織の中で、必ずできてしまうもので、公式組織に対してよい影響も与えることもあるし、悪い影響を与えることもあります。したがって、リーダーは、公式組織がうまく機能するよう、非公式組織を活用していくスキルが求められます。ここまでは少し理屈っぽく書きましたが、これを端的に述べれば、職場の人間関係をよくする必要があるということです。

池本さんが「人を人として見ていない」と指摘するのは、職場で、部下や同僚を、公式組織のみの関係でしかみていないということなのでしょう。でも、人は、会社に所属する前に、感情をもった人間なので、公式組織の立場だけで接していれば、組織活動はぎこちないものになります。このことは、池本さんもご指摘しておられるように、あまり意識されていないことも少なくないようなので、特に、リーダーは注意が必要です。

2022/7/5 No.2029