鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

振り返れば誰もいない病

[要旨]

会社の事業活動は組織的に行われていますが、「振り返れば誰もいない病」というような、組織活動が行き詰ってしまう症状に陥る組織は少なくありません。そこで、経営者の方は、事業活動そのもののだけでなく、その活動を実践する組織についても、円滑な活動ができるよう、組織運営に関するスキルやノウハウを習得する必要があります。


[本文]

立教大学経営学部の中原淳教授、および、田中聡助教の著書、「チームワーキング-ケースとデータで学ぶ『最強チーム』のつくり方」を読みました。同書で、中原教授は、組織としてのチームの活動がうまくいかないときの状態について、「病名」をつけて、次のように説明しています。「(1)『目標ってなんだっけ?』病:期初に時間をかけてチームの目標を設定するものの、いざ活動がスタートすると、それぞれのタスクをこなすことに精一杯になり、誰一人としてチームの目標に立ち返ろうとしなくなる現象。(中略)

(2)役割分担したはずのタスクがまったくつながらない病:チームの目標を達成するために必要なタスクを洗い出し、チームメンバー間で役割分担をしたにも関わらず、それぞれのメンバーが実際に行ってきたタスクを、いざ、つなげてみようとすると、抜け漏れや重複が多く、1つのの成果物にまとまらず、振り出しに戻ってしまう現象。(3)フィードバックより仲良し病:相手メンバーの考えや行動がチームの目標や計画からズレていると感じても、その後の人間関係がギクシャクしてしまうことを恐れて、率直にフィードバックすることを避けてしまう現象。(中略)

(4)振り返れば誰もいない病:チームのために善かれと思って、色々と先回りして行動していた結果、いつの間にか自分だけ一人先走ってしまい、振り返ると、誰もメンバーがついてきていないという現象。(中略)(5)最後はいつもリーダー巻取り病:最初はチーム一丸となって課題解決に取り組んでいたのに、一人減り、二人減り……次々とメンバーが脱落していき、最後には、すべてをリーダーが一人で巻き取らなくてはならないような状況に陥ってしまう現象」(24ページ)

これらの「病気」は、ほとんどのビジネスパーソンが実感していると思います。ところが、このような病気がいつになっても続いている会社が多いのではないでしょうか?特に、オーナー会社で多いのは、「振り返れば誰もいない病」で、続いて「最後はいつもリーダー巻き取り病」も多いのではないかと思います。私が残念に感じるのは、「振り返れば誰もいない病」などは、経営者の方自身が病気の原因になっているということです。もちろん、経営者の方は、懸命に業績を高めようとしているわけで、それがボタンの掛け違いで空回りになっているということは理解できます。

だからこそ、経営者の方には、事業活動だけでなく、こういった病気にかからないようにするための対処法も学ぶことが大切だと、私は考えています。確かに、VUCAの時代にあっては、事業の独自性や新規性などが重要ではあるものの、チームワークがうまくいかなければ、それらの事業も遂行できなくなります。では、具体的にどうすればよいのかということについては、次回以降、説明したいと思います。

2023/4/27 No.2325