鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

世代をまたがった恨みつらみ

[要旨]

地方には論理的な意思決定よりも、情緒的な意思決定がいまだに尊重される土壌があり、それが地域創生活動の中で誤った決定が行われる要因になっています。したがって、そのような情緒的な意思決定をなくすことが、地域活性化の成功の要因のひとつになります。


[本文]

今回も、前回に引き続き、木下斉さんのご著書、「地方創生大全」を読んで気づいたことをご紹介したいと思います。「新国立競技場のケースでもわかる通り、トンデモ意思決定は、国や大企業でも、常に起こっています。その原因は、結局、論理的な意思決定よりも、情緒的な意思決定がいまだに尊重される土壌があるからです。これは大都市よりも地方で起こりやすく、地方では、地縁や血縁がどうしても濃くなりがちだからです。

私が商店街活性化の取り組みにかかわってから最も驚いたことの一つは、『あいつの爺さんは、ウチの店の邪魔をした』といったような、『世代をまたがった恨みつらみ』を受け継いでいたりすることです。個人的に因縁としてもっているならまだしも、公的な立場で利害を調整する役割が期待される商店会長などが、個人的な人の好き嫌いで意思決定を変えてしまいます。(中略)(このように)地域の取り組みにおいて、物事を見るのではなく、発言をした人の好き嫌いによって、『良し悪し』を判断するところがあるのです」(265ページ)

私も、銀行勤務時は地方での勤務が長く、地縁・血縁のしがらみが濃いということは感じています。このようなしがらみは、地域の会社同士で協調し合うという良い面があるのですが、現在の日本のような経営環境が成熟しているときは、地方のしがらみは、個々の会社の事業活動の阻害要因になる面が強いと考えています。これがすべてではありませんが、地方の会社の事業がなかなか発展しない理由には、しがらみの強さがあると、私は感じています。ただし、このしがらみは、経営者の世代交代が進むにつれ、徐々に薄まりつつあると思います。地方経済の活性化のためにも、個々の感情を乗り越えて、地域全体からの視点で活動する会社が増えて欲しいと感じました。

2022/6/2 No.1996