鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

マネジメント層の構造(2)

[要旨]

1990年代までの日本では、事業規模の拡大にともない、取締役の数も増えて来ましたが、取締役の多い会社では、上席の取締役(役付取締役)で構成される、非公式な組織の経営会議や常務会などが、実質的に意思決定を行い、その後、取締役会でそれを追認するようになりました。


[本文]

前回に続いて、マネジメント層の構造について説明します。戦後の日本では、急速な経済成長にともない、多くの上場会社も事業規模を拡大してきました。それに合わせ、会社の取締役数も数十人となる会社も珍しくありませんでした。ちなみに、中央大学法科大学院の大杉謙一教授が、1992年に、主要な会社576社に対して行った調査によれば、取締役の数が30人以上の会社は、30社(6.9%)もあったそうです。

このように、取締役の数が増えた要因は、従業員のモチベーションを高めるために、昇格するポストとして取締役の地位を与えたということと、商談を有利に進めるために、部長クラスの従業員を取締役の肩書を着ける必要があったという背景からのようです。しかし、取締役の数が20人以上になってくると、取締役の役割のひとつである意思決定は迅速に行うことができないということも、容易に理解できます。

そこで、実質的な意思決定は、社長、会長、副社長、専務取締役、常務取締役など、取締役の中でも上位に位置している、いわゆる「役付取締役」構成される、非公式な機関の、「経営会議」、「常務会」などで行われ、その後、開かれる、公式な取締役会で、経営会議などで決まった方針が追認されるようになったようです。すなわち、大規模な会社で、多くの取締役がいる会社では、主に上位の取締役が方針を決定し、主に下位の取締役は業務執行に専念するというように、役割が分担されていたということです。この続きは、次回、説明します。

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