[要旨]
5月に、きらやか銀行が、公的資金注入の要請の検討を始めたと公表されましたが、これは、新型コロナウイルス感染症等に関する特例が設けられてから初めての事例になるとみられます。同行の申請をきっかけに、これから、別の銀行からも公的資金注入の要請が行われるようになるのではないかと、私は予想しています。
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5月13日に、仙台市に本社がある銀行持株会社のじもとホールディングスが、金融機能強化法に基づく国の資本参加(公的資金注入)を求めることを検討することを発表しました。それによれば、同社が国から出資を受けたと同時に、同社の子会社で、山形県山形市に本店のある、第二地方銀行協会加盟銀行のきらやか銀行に出資をするそうです。
もし、この申請に国が応じた場合、金融機能強化法が、令和2年6月に改正(同年8月施行)され、新型コロナウイルス感染症等に関する特例が設けられてから、初めての例になる見込みです。その特例によれば、銀行が出資を受けるにあたり、銀行の経営者に経営責任を求めないというものです。しかし、同行の資本参加の要請については、2つの疑問点が投げ掛けられているようです。
そのひとつは、報道によれば、同社はすでに300億円の公的資金(2009年に200億円、2012年に100億円)を受けていますが、いったん、そのうちの200億円を返済し、新たに新型コロナウイルス感染症等に関する特例によって、180億円の出資を受けることになります。このことは、公的資金の単なる借り換えであり、出資額が増えるわけではないということです。
もうひとつは、きらやか銀行は、2021年3月期に、約71億円の国債等債券償還損を計上しており、そのことなどが要因となって、同行単体で、約43億円の経常損失業を計上しました。したがって、同行の業績が低迷している要因は、中小企業向け融資以外によるところが大きいということです。
とはいえ、きらやか銀行の経営基盤を安定させることは、山形県を中心とした中小企業の資金繰安定化に貢献することは間違いないと思います。そして、新型コロナウイルス感染症等に関する特例が設けられてから、約2年が経ってから、初めてその特例の事例が適用されようとしています。今後、同行の事例をきっかけに、他の銀行からの申請も行われるようになってくるのではないかと、私は考えています。
2022/6/3 No.1997