[要旨]
地方創生プロジェクトが失敗するときの理由には、事業計画の作成を外部コンサルタントに丸投げし、また、事業計画の良し悪しが成功の要因と考えてしまうことがあげられます。しかし、プロジェクトを成功させるには、コンサルタントに助言をもらうことも大切ですが、それ以上に、実行する人たちの主体的な行動が欠かせません。
[本文]
今回も、前回に引き続き、木下斉さんのご著書、「地方創生大全」を読んで気づいたことをご紹介したいと思います。木下さんは、地方創生のプロジェクトが失敗する要因のひとつとして、事業計画作成がコンサルタントに丸投げして作成されてしまうことをあげておられます。「プロセス全体を見て、撤退戦略をも入れ込んだ計画が大切であることは言うまでもありませんが、そのような計画が作成されない一因として、計画を実践する人がその計画を立てるのではなく、計画立案自体をコンサルタントに丸投げしていることがあげられます。(中略)
このことは、実践によって成果をあげることではなく、『計画を立てること』自体がコンサルタントの業務になります。委託する地域側が、『そのとおりにやれば成功する計画が欲しい』という無謀な要求を出すため、コンサルタント側も、最初から、失敗したときのことに触れて契約が打ち切られてしまわぬように、変更条件や撤退条件を計画に入れ込んだりはしません」(245ページ)
木下さんのご指摘の主旨は、失敗したときの傷が深くならないよう、あらかじめ、失敗することも前提にして、撤退するときの条件を盛り込んで計画を立てることが大切ということですが、私もこのご指摘はまったくその通りだと思います。そして、私は、さらに問題だと感じることは、プロジェクトの当事者が、コンサルタントに依存的になっていることだと思います。
というのは、コンサルタントに事業計画の作成を依頼するということは、表面的には、専門性の高い人に作成を依頼することの方が、より良いものが出来上がるということを狙っているとも言えますが、実際には、当事者意識が低いこと、そして、「失敗しない事業計画」を作成してもらい、単にそれを実行するだけでプロジェクトが成功するという、甘い考え方をしているのだと思います。
そして、木下さんは、「地域を活性化させるために必要なことは、客観的な助言ではなく、問題解決のために主体的に知恵を出し、実行すること」とご指摘しておられますが、私もその通りだと思います。プロジェクトの実行にあたって、事業計画は必要ですが、それがすべてではありません。事業計画立案は、プロジェクトを実行する前の準備の段階で行われるものですから、プロジェクトが成功するかどうかは、事業計画を遂行するにあたって、主体的に活動するかどうかの方が、はるかに大きな要因と言えます。
それを理解していない人たちは、事業計画を立てることを外部に依頼し、しかも、事業計画が良くできさえすれば、プロジェクトも成功すると考えてしまうのでしょう。このようなプロジェクトへの臨み方は、事業の内容がどのようなものであるかの前の問題だと思います。この点については、多くの方が理解しているようで、見落としがちなことだと、私は感じています。
2022/6/1 No.1995