鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

マーケットの厳しい目

[要旨]

公共施設は、事業主体が役所であることから、「開発できる予算さえあれば、作ってしまう」傾向にあります。そこで、銀行から融資を受けて施設を作ることにすれば、「マーケットの厳しい目」で運営の見通しの検証を受けることになり、より、成功に近づくことになります。


[本文]

今回も、前回に引き続き、木下斉さんのご著書、「地方創生大全」を読んで気づいたことをご紹介したいと思います。同書には、岩手県の県庁所在地の盛岡市の南側に隣接する、紫波郡紫波町の公民合築施設、「オガールプラザ」を成功事例として紹介されていました。「これまでも、多くの自治体で『公共施設』と『民間施設』を一緒に建てる開発は行われていますが、そのほとんどが失敗しています。これはひとことでいえば、公共施設開発の手法を用いて、民間施設を一緒に建ててしまうからです。(中略)

皮肉なことに、『マーケットの厳しい目』のチェックを事前に受けるほうが、『プロジェクトの持続可能性』を見るうえで、極めてまともな現実的な問題と向き合うことになるわけです。(中略)(将来、得られる見込みのキャッシュフローで)返済可能な施設というものは、建設費の捻出さえ難しく、維持費にかけられる財源が減少していく地方にこそ、求められる重要な客観的評価です。(中略)もちろん、すべて民間資金でできるとは言いませんが、施設全体のあり方を考えるうえで、最初に『厳しい現実』と向き合ったほうが良いのではないでしょうか」

ちなみに、オガールプラザは、金融機関からの投融資を得るために、18か月をかけてすべてのテナントが決まってから建設を始めたり、鉄筋コンクリート造3階建の計画を木造2階建に変更して建設費を億単位で節減したりしています。ある意味、役所的発想では無駄遣いしがちということは多くの方がお考えだと思います。そして、それと同様に、起業しようとする方の中にも、楽観的な計画を建てる人も少なくないと私は感じています。

事業計画は、経営者の方がひとりで決めて、それを貫こうとするあまり、融資を受けることができなかったり、融資を受けられても見込み通りに利益を得られなかったりとする例を見ることは、ときどきあります。そこで、起業を考えている方は、自らの構想について、銀行や専門家などに事前に相談し、「マーケットの厳しい目」でチェックしてもらうことが、起業をより成功に近づけることになると、私は考えています。

2022/5/31 No.1994