鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

資本主義経済と自由主義経済

[要旨]

よく、資本主義経済という言葉が使われることがありますが、それは、労働力も商品であるという誤った考えに基づく考え方であり、資本主義経済は実在しません。現在、資本主義経済という言葉が使われるとき、その多くは、実際は、自由に経済活動が行われていること、すなわち、自由主義経済を指しているようです。


[本文]

前回まで、5回にわたって、資本金や自己資本(純資産)に関するテーマについて説明して来ました。今回は、会計的なことからはずれるのですが、「資本」という言葉が使われている、経済学の用語について、私の考えを述べたいと思います。それは、資本主義経済という言葉です。これについては、日本放送協会のウェブページに、動画による解説が載っているので、ご参照いただければと思います。

この動画でも、資本主義経済の一部を、否定的に解説していますが、私も、資本主義経済の考え方は、事実と異なるところがあると考えています。では、どういう部分が事実と異なるのかというと、「労働力も商品と考える」という部分です。これは、正確性に欠ける説明ですが、人は損得だけで動くものという考え方、すなわち、「経済人仮説」は、部分的にしかあてはまりません。

しかし、マルクスの言う「資本主義経済」は、「労働力も商品と考える」、すなわち、人は損得だけで動くことを前提にしているため、マルクスの考える経済社会は実現しなかったということは、歴史的に見ても、事実でしょう。ちなみに、人は、どのような考え方で、経済活動に関わっているのかということについては、私もこれまで何度か説明してきましたが、「社会人仮説」や「全人仮説」などがあります。

話をもどすと、マルクスのいう資本主義経済は、実現しなかった、というよりも、そもそも、マルクスが実現させたいと望んだだけの空想であり、もともと存在しないということが、私の考えです。一方で、私たちは、会社の元手を「資本」と呼んでいることから、そのような会社が事業活動を行うことを、単純に、資本主義経済と考えている方も多いと思います。

しかし、前述の通り、マルクスのいう資本主義経済は、労働力を商品ととらえる考え方なので、もし、そのように考えていない方は、実在しない資本主義経済という言葉は使うべきではありません。恐らく、そこまで意識せずに資本主義経済という言葉を使っている方が指している経済は、実際は、自由主義経済のことだと思います。したがって、現在の日本のように、会社が自由に経済活動を行っている経済を指す場合は、自由主義経済(または、市場主義経済)と呼んでいただきたいと思います。

なお、最後に、念のため、私の考え方について補足いたします。私は、資本主義経済について否定していますが、資本主義経済を肯定してはならないとは考えていません。もし、マルクスの考える通り、労働力は商品であると考える方がいれば、その方は、資本主義経済は実在すると主張することに、何ら、問題ありません。

また、私が、資本主義経済は実在しないと主張しているからといって、自由主義経済が完全であるとは考えていません。かつて、そして、現在も、会社が秩序のない経済活動を行うことによって、社会問題が起きていることも事実です。そこで、それを省みて、現在では、「企業の社会的責任」、「メセナ活動」、「CSV経営」、「企業市民」などという考え方が生まれ、また、多くの会社で実践されるようになり、そのことによって、自由主義経済での社会的な課題が減少しつつあります。

f:id:rokkakuakio:20210606142038j:plain