鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

不渡り処分の猶予(4)

前回、手形の不渡り処分に関し、実質的に

は、1回目の不渡りを起こした時点で、そ

の会社は社会的な信用を大きく失い、その

時点で事業の継続ができなくなるという、

不渡り処分の実質的な意味についてお伝え

しました。


ところで、不渡り処分を猶予をすることに

ついて、意味があるのかというご質問も受

けています。


これについては、意見が分かれるところで

あり、猶予が必ずしも正しいと言い切るこ

とはできません。


しかし、私は、いまの日本の経済活動の状

況に鑑みれば、猶予するべきだと考えてい

ます。


その理由は2つあります。


ひとつめは、例えば、ある飲食店が、新型

コロナウイルス感染症の影響を受け、売上

が大きく減少し、手形決済代金を用意でき

ずに不渡りを起こしたとします。


通常であれば、この飲食店は、不渡りを起

こした制裁として、手形交換所で不渡り処

分が行われます。


しかし、新型コロナウイルス感染症による

経済活動への影響は、日本だけでなく、全

世界に及ぶものであり、それによって売上

が減少し、不渡りを起こすことになったと

き、それを、個別の飲食店だけの責任とす

ることは重すぎると考えられます。


ふたつめは、売上の減少する会社はたくさ

ん存在し、したがって、不渡りの件数も増

加するものと考えられます。


そのことは、多くの会社経営者が認識して

いると思いますが、実際に、取引停止処分

を受ける会社が増加し、その事実が会社倒

産となって顕在化することは、心理的な面

で経済活動に悪影響を強めてしまうと考え

られます。


しかし、不渡り処分や取引停止処分を猶予

することによって、すべてではなくても、

倒産する会社は減少すると思われます。


以上が、不渡り処分を猶予すべきと私が考

える理由です。


しかし、不渡り処分を猶予したとしても、

不渡りによって手形が決済されなかったこ

とは事実であり、その会社の支払い能力が

低くなっていることは事実です。


そうであれば、その事実は、不渡り処分の

猶予をしても変わりがないのだから、猶予

することに意味はないという考え方が、不

渡り処分の猶予に否定的な考え方だと思い

ます。


繰り返しになりますが、不渡り処分の猶予

は、100%正しいと言い切れない部分も

ありますが、経済状況を回復させる施策に

は、どうしても副作用が現れる面もあると

思います。


別の例では、セーフティーネット保証の充

実は、本来、淘汰されるべきゾンビ会社を

助けてしまうという面もあります。


したがって、今回の記事の結論は、不渡り

処分の猶予は、混乱状況にある経済活動を

なるべく早く修復させるために、一時的に

行われるべき対応であるということです。


また、資金繰がきびしい会社は、事前に

セーフティネット保証などを活用して十分

な金額の融資を受け、不渡りを起こさない

ような備えをすることも大切でしょう。


なお、当事務所では、新型ウィルス感染症

の影響を受けた会社さまからのご相談につ

いては、電子メールでのみ、無償でお受け

しておりますので、ご希望の方は、こちら

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