[要旨]
利益を繰越すことで、利益剰余金が増加すれば、事業活動は、より安定します。ところが、繰越す利益額を増加させようとすると、納税額も増加します。経営者によっては、納税額を少なくしたいと考える方もいますが、できる限り納税し、それと同時に、より多くの利益の繰越を行うことが望ましいと言えます。
[本文]
前回、事業活動で利益を得ると、純資産の部の利益剰余金が増加し、逆に、赤字であると、利益剰余金が減少してしまうので、経営者は、利益剰余金が減らないよう注意しなければならないということを述べました。では、改めて、なぜ利益剰余金が増えることが望ましいのでしょうか?
これは極めて当たり前のことですが、純資産の部が増加すると、経営が安定するからです。再び、では、なぜ、純資産の部が増加すると、経営が安定するのでしょうか?それは、事業活動で必要な資金に、より多くの純資産の部の資金を充てることで、銀行などからの融資を減らすことができるようになるからです。
しかも、銀行から融資を受ければ金利を支払わなければなりませんし、返済もしなければなりませんが、利益剰余金については、金利を支払う必要も、返済をする必要もありません。(資本金については、返済はしなくてもよいのですが、金利支払に代わって配当があるので、完全にコストが不要とは言い切れない面があります)ということで、利益を得て、利益剰余金に加えるということは、自己金融機能が働いているということになるのですが、このことは意外と忘れられがちなので、今回、改めて記事にしました。
ところで、もうひとつ、利益剰余金について、誤解されがちなことがあります。それは、納税です。例えば、100万円の利益を得た会社は、法人税率が40%だった場合、当然、40万円の納税を行い(さらに、配当をしない場合)、60万円を利益剰余金に加えることができます。これを言い換えれば、利益剰余金を多くしようとすると、納税額も多くなります。
ところが、納税は避けたいと考える経営者の方は、利益を減らすために、何らかの対策を講じることがあります。その結果、利益剰余金もあまり増えないことになります。これについては、意見が分かれるところなのですが、私は、事業活動を安定化するには、できる限り納税し、それと同時に、より多くの利益の繰越を行うことが望ましいと考えています。