鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

融資は最も有利な資金調達方法

[要旨]

融資は、支払利息が経費になるので、実質的なコストは、法人税率相当額を差し引いた額になります。内部留保は、繰越利益のうち、法人税を差し引いた額になるので、その法人税が調達コストになります。出資のもともとの原資は、オーナー会社の場合、社長の役員報酬なので、その所得税・住民税が調達コストになります。したがって、コスト面では、融資が最も有利な資金調達方法ということができます。


[本文]

今回も、前回に引き続き、税理士の児玉尚彦さんのご著書、「会社のお金はどこへ消えた?-“キャッシュバランス・フロー”でお金を呼び込む59の鉄則」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。児玉さんは、資金調達は、コスト面で、銀行からの融資が最も有利であると説明しておられます。

「会社が、新たにお金を調達する方法は、大きく分けて、銀行借入、増資、そして、利益の内部留保の3つです。この中で、費用負担が最も少ないのはどれでしょうか?借入金と増資のコストを単純に比較すると、借入金に対するコストは支払利息で、増資のコストは配当金です。支払利息は費用になり、節税効果がありますから、実際のコストは金利から節税分を差し引いた金額になります。配当金に関しては、税引き後の利益から支払うことになりますので、節税効果はありません。(中略)

ただし、同族会社の場合は、増資をしても配当をせず、調達コストを抑えることも可能です。しかし、同族会社である中小企業の場合、株主=社長ですので、増資資金は基本的に社長が会社から支給された役員報酬を貯めておいて出資することになります。したがって、その増資のお金は、役員報酬を受ける時に、所得税・住民税を支払った後のお金です。これも増資のための調達コストだと考えると、オーナー社長からの増資は、かなり割高となります。

また、利益を内部留保する場合でも、会社にプールされる利益は、法人税を支払ったあとのお金ですから、留保するには法人税相当額を負担しなければならず、税金が調達コストになります。利益を出して内部留保を増やして行くというのは、経営の王道ですが、これだけではどうしても資金調達に限界があります。増資や利益の内部留保のように、税引き後のお金で資金を調達しようとすると、資金調達コストが高くなってしまいます。結果として、手っ取り早く、かつ、コストをかけずにお金を調達するには、可能な限り借入金をりようすることが得策です」(143ページ)

コスト面だけで見れば、児玉さんのご指摘の通り、融資が最も有利であると、私も考えています。ただし、会社の融資額が増えると、自己資本比率が低くなるので、純資産の額が変わらなければ、受けることができる融資の額にも限界があります。したがって、融資額を増やしたい場合は、その20~30%は内部留保を増やす必要があります。もし、あまり利益が出ていない場合は、社長からの出資を受けるということになるでしょう。もちろん、コスト面以外では、内部留保や出資と比較して、融資にはデメリットもあります。

例えば、返済期限がある、使途が限定されるということなどです。それを勘案しても、中小企業では、融資が最も有利な資金調達方法だと思います。そこで、事業を拡大していくためには、まず、自己資本を充実させながら、融資可能な額を増やして行くという方法が、最善であると言えます。したがって、内部留保を増加させるということが大切になるわけですが、だからこそ、利益を確実に確保することの重要性をより強く認識できると思います。

2022/12/21 No.2198