鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

忘れられがちな経済活動のグローバル化

[要旨]

日本の会社の事業活動は、グローバル化していたり、または、外国の経済活動に大きく影響を受けています。したがって、日本国政府の経済政策も、それを前提にすべきものですが、現在の政府の政策は、そのような視点が欠如していると言えます。


[本文]

ベネッセコーポレーションOBで、作家の冷泉彰彦さんのメールマガジンを読みました。要旨は、2月21日の衆議院予算委員会で、野党議員が、「資本市場は本来、資金調達の場だったのに資金流出の場になっている」との指摘に対し、総理大臣は、「資本主義というものは関与するステークホルダーそれぞれに資するものでなければ持続可能なものにならないという観点から考えた場合に、株主還元という形で成長の果実等が流出しているということについてはしっかりと受け止め、この現状について考えていくことは重要であると認識している」と回答しているが、質問も回答も的外れなものだというものです。

私も、冷泉さんと同じ考えです。このうち、総理大臣については、経済に関する理論(および経営に関する理論)をまったく理解していないということについては、以前、私も指摘しています。(ご参考→ https://bit.ly/3LYmwpd )一方、野党議員の方の質問に関しては、冷泉さんもご指摘しておられますが、資金が国外に流出しているのではないかという着眼点はすばらしいと思います。

このことについては、私が指摘するまでもないのですが、日本のリーディングカンパニーの多くは、経済活動がグローバル化している一方で、日本で経済活動について論じられる時に、このことは意外に忘れられがちになってしまっていると、私は感じています。例えば、トヨタの2021年の自動車販売台数は、約9.6百万台でしたが、このうち日本以外で販売された台数は約8.1百万台でした。一方、生産台数は約8.6百万台でしたが、このうち日本以外で生産された台数は約5.7百万台でした。

トヨタの本社は日本にありますが、同社の事業活動に占める国内での活動の割合は小さいので、日本国の総理大臣が「新しい資本主義」をかかげ、仮にその政策に効果があったとしても、それは限定的でしかないでしょう。(もちろん、日本の会社には、経済活動が国内だけという会社が多いですが、日本の貿易取引の額の多さや、新型ウィルス感染拡大の影響を受けているとはいえ、日本に来日する外国人の数を鑑みれば、経済活動を日本だけに限定して考えることは、あまり妥当とは言えません)

とはいえ、私の考え方だけが100%正しいとは思いませんが、日本の政府の経済活動に対する政策の前提条件が的外れになっているということは、冷泉さんのご指摘している通りでしょう。そのような政策では、現在の日本の課題はいつまでたっても改善しないことは明らかであり、残念に思っています。

2022/2/25 No.1899

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