鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

業界は内部からは変えにくい

[要旨]

業界の常識は、その業界にいる人では、それを超える発想をすることはなかなか難しいものの、それを破ることができれば、新たな市場を開拓できる機会があるので、大胆な発想ができるようになるように努めることが大切です。


[本文]

私の知人で、経営コンサルタント赤沼慎太郎さんのご著書、「銀行としぶとく交渉してゼッタイ会社を潰すな」を読んだところ、意外なことが書かれていました。というのは、「資金繰を改善するには、信用保証協会保証つきの融資について、銀行から信用保証協会に対して代位弁済を依頼してもらう方法もある」というものです。これについては事実です。

一般的に、信用保証協会の保証つきの融資を、信用保証協会に代位弁済してもらうことで、これまで銀行に毎月支払っていた定例返済をしなくてすみます。もちろん、信用保証協会が代位弁済してもらった融資金相当額(求償債務)は残り、代位弁済を受けた後も、引き続き、信用保証協会にそれを支払う義務は残りますが、その支払いは、従来通りの定例返済よりも少額の金額(ケースバイケースですが、1か月ごとに1~10万円程度)を支払えばすむことが一般的です。

しかし、私だけではないと思いますが、銀行職員出身のコンサルタントは、顧問先にこのようなことは薦めることはほとんどないでしょう。というのは、やはり、銀行から見て、融資を受けている会社に対して、代位弁済を受けたという履歴をつくることは、事実上、二度と銀行と融資取引ができなくなってしまうと考えるからです。理論上、代位弁済を受けたことがある会社であっても、求償債務をすべて支払うと、再び、信用保証協会から新たな保証を受けることが可能になります。

ただし、実務上は、求償債務が残っているかどうかという事実よりも、代位弁済を受けたことがあるかどうかという経歴が問題視され、新たな保証を得ることは難しいようでした。しかし、平成18年に、求償権消滅保証という制度ができました。求償権消滅保証とは、信用保証協会の代位弁済を受けた会社に対し、求償債務を消滅させるための保証制度です。

具体的には、信用保証協会から代位弁済を受けた会社が、その後も事業を継続しながら求償債務の支払いを行っているとき、再生支援協議会等の関与によって再生計画を作成すると、それに基づき、信用保証協会が新たな保証、すなわち、求償権消滅保証を行うことで、その会社は銀行から融資を受けることができ、その融資で求償債務を消滅させることができるようになります。

もちろん、求償権消滅保証を利用した会社は、求償債務が残っているどころか、信用保証協会のお墨付きも得ているわけですから、他の銀行からも正常な相手として、通常通りに融資を受けることができるようになります。とはいえ、代位弁済を受けた会社のすべてが、求償権消滅保証を利用できるわけではありませんが、代位弁済を受けたことが、必ずしも新たな融資が受けられなくなるということではないということは明確です。

このような制度ができた経緯を私は把握していませんが、赤沼さんのような発想は、必ずしも間違いでないということは明らかであり、むしろ、求償権消滅保証を利用できるようになるまで事業改善に取り組むことで、再生の可能性も残るわけです。したがって、この例のように、業界の常識は必ずしも正しいとは限らないわけです。私自身も、既成概念にとらわれてはいけないと考えつつ、なかなか抜け出すことができないでいることを反省しています。

ちなみに、他の業界の例では、10分カットのQBハウスがあげられると思います。理美容業では、散髪の際は洗髪を外せないという常識があったようですが、QBハウスでは、その常識を破り、洗髪を省略することで、ブルーオーシャン市場を開拓したといわれています。これは言及するまでもないことですが、新たな市場は、常識を破ったところに存在するようです。

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