鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

ゾンビ会社を残すことは非人道的

[要旨]

自由主義経済のもとでは、競争に敗れる会社が出てきてしまいますが、競争がなければ、非効率な会社が増えてしまうので、競争は、社会全体からみれば、効率性を高めるために必要なプロセスと言えます。


[本文]

立命館アジア太平洋大学学長で、元ライフネット生命保険会長の出口治明さんと、農林中金バリューインベストメンツ常務取締役の奥野一成さんの対談が、ダイヤモンドオンラインに載っていました。(ご参考→ https://bit.ly/2YFhK9D )その中で、ゾンビ会社に関しておふたりがお話しておられました。奥野氏「ゾンビ会社については銀行の問題もあります。そもそも、銀行が保護されていますから、業界そのものが過当競争状態になっています。その結果、リスク・リターンのバランスにおいて魅力的とはいえないような企業、簡単にいうとダメな会社を銀行が無理やり延命させてしまうから、問題点が解決されないままになってしまいます」

出口氏「会社を潰したり、レイオフを実行したりするのは、非常にアン・ヒューマン(非人道的)なことであるという間違った認識が染みついていますね。よく考えて欲しいのは、逆にレイオフをしないことの方がはるかにアン・ヒューマンだということです。プロ野球に例えて考えると分かると思うのですが、四番打者が打てなくなり、レギュラーから外れた後も、戦力外通告を受けずに、ベンチを温めていたらどうなるでしょうか。

その人は、他のチーム、あるいは野球とは全く別の仕事に就けば、もっと活躍出来たのかも知れないのに、働ける旬の時期を、ずっとベンチに座ったままで衰えていくのです。これこそアン・ヒューマン以外の何物でもありません。『残念ながらうちでは活躍出来なかったけれども、他に行けばチャンスに巡り合えるから、そこで頑張っておいで』と言って送り出してあげる方が、はるかにヒューマンです」

私は、おふたりの考え方は正しいと思います。ただ、日本は、まだまだ、雇用の流動性が高くないため、出口さんのおっしゃるように、「残念ながらうちでは活躍出来なかったけれども、他に行けばチャンスに巡り合えるから、そこで頑張っておいで」とは言いにくい面もあると思います。また、現在は、M&AやMBOなどによって、緩やかな会社(経営者)の退場という事例が徐々に増えていますが、やはり、ぎりぎりまで事業を続けて、いきなり倒産するという会社の例は多いので、会社倒産に対するイメージは、依然としてよくありません。

ただ、緩やかに会社を閉じる事例が増えて行けば、そのことに対する社会的なイメージも変わっていくと思います。私は、自由主義経済のもとでは、競争の敗者が出ることは避けられませんが、そのことは、出口さんのおっしゃる通り、社会全体からみれば、より効率的な経済活動ができるようになるためのプロセスでもあると思います。逆に、競争のない(または少ない)経済活動が行われれば、多くの非効率な会社が増えてしまいます。「競争」があることは、社会全体にとってよいことと考えるべきということを、出口さんと奥野さんの対談を読んで、改めて感じました。

 

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