鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

ビジネスはすぐに結果が出ない

[要旨]

現在のビジネスは、すぐに結果が出にくいものですが、それに気づいていなかったり、そのようなことを避けようとしたりするビジネスパーソンも少なくないので、ビジネスで結果を出すには時間がかかるという前提で臨むことで、ライバルと大きく差をつけることができるでしょう。


[本文]

先日、経営コンサルタント相馬一進さんのブログを読みました。ブログの要旨は、「現代の社会は、インスタントに、今すぐニーズを満たしてくれる社会になったため、メンタル的に弱い人が増えた。そのような人たちは、すぐに欲求が満たせないとフラストレーションを感じるようになるが、そのような人たちがビジネスをする側に立つ場合、メンタルの弱さはマイナスの要素にしかならない。ビジネスは、すぐに結果が出るものではなく、起業準備をし始めてから軌道に乗るまで、数年間かかることはよくあり、インスタントに欲求が満たされることに慣れていると、その数年間の我慢に耐えられない」というものです。

極めて妥当な分析であり、多くの方がご理解されると思います。しかし、今でも、私に対し、「会社が赤字でも、すぐに融資を受けられるようにする方法を教えて欲しい」とか、「すぐに売上を増やせるようにするにはどうすればよいのか」といったご相談をして来る方は、少なくありません。本旨からそれますが、それらの質問への、私の回答は、「そのような方法はありません」なのですが、そのように回答すると、たいていは、「あなたはコンサルタントなのに、そのようなことも教えることができないのか」と酷評されます。(笑)

話を戻すと、商品を買う(サービスを受ける)側が、「すぐに商品を届けて(サービスの効果を出して)欲しい」という要求を出すだけで、その要求を満たしてもらえるようになった時代なのであれば、逆に、商品を売る(サービスを提供する)側は、そのようなことを可能にする体制を持つことができるようになるまでには、一朝一夕ではできないということも、明白でしょう。ところが、立場が逆になれば、顧客のときと同じようにならないということに気づくことは、容易なことのようですが、実際には、それに気づく人もあまり多くないのでしょう。そこで、相馬さんの言うように、「ビジネスはすぐに結果が出るものではない」ということに気づいているだけで、すぐに結果を求める多くのビジネスパーソンたちと、大きく差をつけるということになるでしょう。

さらに、私が付け加えたいことがあるのですが、現在のビジネスは、すぐに結果が出ないだけでなく、本当の強さは目に見えないところにあると思っています。例えば、「ディズニーリゾートの経済学」という本によれば、オリエンタルランド社(OLC)では、東京ディズニーリゾート(TDR)の敷地に、10~15mの深さで、固めた砂を埋めておくという耐震対策をしていたため、平成23年3月11日に起きた東日本大震災のときは、周辺の住宅地が地盤の液状化による被害が起きたにもかかわらず、TDRの敷地は、ほとんど液状化が起きなかったそうです。

その結果、当時、TDRにいた約7万人の顧客に怪我人は出なかったそうです。さらに、地震の起きた約1か月後の4月15日に東京ディズニーランドが、約1.5か月後の4月28日に東京ディズニーシーが再開しています。OLCが、このような対策を、大規模な地震が起きる、約30年前から備えていた要因は、経営者の考え方の差だと思います。もし、OLCが耐震対策をとっていなかったとしても、東日本大震災のときに、TDRの周りの住宅地が液状化しているのだから、TDRの敷地が液状化したとしても、(顧客に怪我人が出なかったという前提ですが)経営者は批判されなかったかもしれません。

さらに、このような耐震対策が行われていたことも、もし、大規模地震が起きなければ、外部人たちが知ることにならなかったと思います。そのような前提で、同社が耐震対策を行っていたところに、経営者の考え方の水準の高さが表れていると思います。そして、その考え方は、耐震対策にとどまらず、同社が好業績を続けるなど、ほかの面でも表れていると思います。

繰り返しになりますが、現在のビジネスは、目に見えるところでの差はつけにくいことから、ライバルとの差別化は、目に見えない部分に、時間をかけて取り組んでいくということになると思います。そして、それを実践している会社に対しては、「簡単にすぐに結果が出て欲しい」と考えている経営者の経営する会社は、まったく歯が立たないくらい、強い会社になるでしょう。

 

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