鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

佐賀共栄銀行の目標管理

日経ビジネス2020年3月16日号に、

佐賀共栄銀行の業務改善に関する記事が掲

載されていました。


(ご参考→ https://bit.ly/33lWQNb


佐賀共栄銀行の資産規模は2,702億円

(2019年9月期)で、地方銀行の中で

は最も少ない銀行(ちなみに、最も大きい

福岡銀行の資産規模は、17.4兆円)で

すが、融資の平均金利は2.00%(20

19年3月期)と、全国の銀行115行の

0.99%の2倍になっています。


このような、他行と比較して良好な指標を

得られるようになった背景には、財務官僚

出身の二宮頭取が2014年に就任し、強

力なリーダーシップを発揮していたことが

挙げられますが、私は、二宮頭取が、営業

店の評価目標の、融資額を増やすという目

標を廃止し、代わりに、貸出金利息収入を

増やすという目標にしたことが大きいと考

えています。


このような目標の設定の仕方は、一見する

と、当たり前のように感じられますが、現

場の意識としては、どうしても量の拡大に

意識が向いてしまう傾向があります。


例えば、同行では、2015年3月期に、

融資額が前期比で2.1%増えましたが、

一方で金利競争が激化などのため、融資平

金利が2.18%から2.10%に下が

り、貸出金利息収入も減ったそうです。


冷静に考えれば、利益が増えることが望ま

しいのですが、感情的に、融資量も増やさ

なければならないという意識が働いてしま

うと、利益を減らしてしまうことにもなっ

てしまいます。


このことを二宮頭取も理解していたからこ

そ、融資量を増やすという目標を廃止した

のでしょう。


ちなみに、このような活動は、銀行だけで

なく、一般の会社でも起きやすいと思いま

す。


例えば、売上目標を達成しようとして、採

算のとれない取引も増やしてしまい、その

結果、売上は増えても利益は減ってしまう

という会社は少なくありません。


もっと悪い会社は、採算管理もせず、顧客

のいいなりに値下げをして、売上だけは得

ているものの、経営者はそれだけで満足し

てしまい、赤字体質を続けてしまうという

例もあります。


ただ、ここまで書いて来たことは、私が述

べるまでもなく当然のことなのですが、今

回、佐賀共栄銀行の事例をご紹介した理由

は、同行の目標設定の仕方は、バランスス

コアカードの考え方と通じるものがあるか

らです。


会社の目標設定は、量と質の両方に対して

行われることが多いと思います。


同行でも、資産規模と利益額の両方の拡大

を目指してきたと思います。


ただ、本来は、利益の獲得が最終目標であ

ることが頭では分かっていても、利益を犠

牲にして、規模を拡大してしまうことが、

まま、起こります。


そこで、目標達成のための活動に齟齬が起

きないよう、二宮頭取は、「融資量×融資

利率=貸出金利息」というような目標を設

定して、最も優先しなければならない目標

と、その達成方法を明確化したのだと思い

ます。


バランススコアカードでも、KPIという

目標値を使いますが、下位のKPIを達成

すると、上位のKPIが達成されるという

有機的な関係で設定されます。


これを佐賀共栄銀行の例にあてはめると、

融資量をKPI(1の1)、融資利率をK

PI(1の2)とすると、両者を上昇させ

ることで、上位の目標である貸出金利息の

KPI(1)が達成されるということにな

ります。


繰り返しになりますが、融資を増やしても

融資利率を下げていては利益は増えないと

いうことは、同行職員の方も頭では理解で

きていても、その通りの行動がなかなかで

きないことから、目標の設定を明確にする

ことで、整合性のとれない活動をなくすこ

とができ、本来の目標を見失わない、合理

的な活動に集中することができるようにな

ります。


ちなみに、二宮頭取は、融資相手の会社か

ら利下げの要請があったとき、採算の取れ

ない取引であれば、取引を解消(縮小)し

ているそうです。


今回の記事の結論は、整合性の取れる目標

設定は、利益を増やすための活動の無駄を

なくすことができるようになるということ

であり、バランススコアカードの目標設定

は、そのような考え方に基づいているとい

うことです。

 

 

 

 

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