鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

粉飾している会社の共通点

帝国データバンクが、ダイヤモンドオンラ

インに、昨年、決算書を粉飾していた会社

の倒産件数が増加したことについて、寄稿

していました。


(ご参考→ https://bit.ly/2TST0YX


その寄稿によれば、粉飾をしていた会社に

は、共通する3つの特徴があるそうです。


(1)負債額が多い。(10億円以上)


(2)融資取引をしている金融機関数が多

い。(20社以上)


(3)粉飾をしている(粉飾が表面化しな

かった)期間が長い。(10年以上)


このような特徴のある会社の行う粉飾は、

一般的にイメージされている「粉飾」であ

り、かなり強い意図をもって、手の込んだ

粉飾が行われています。


そして、そのような特徴のある会社と融資

取引をしている場合、多くの銀行は、「少

し怪しい」と感じつつ、融資取引を続けて

います。


とはいえ、怪しいと感じた会社に対して、

確たる証拠がなければ、いきなり融資を引

き上げることは難しいので、融資取引を避

けたいと考えた場合は、徐々に取引を解消

して行きます。


しかし、そうであれば、「『粉飾が表面化

しない(倒産しない)期間が長い』という

特徴が現れるのはなぜか」という疑問が出

ると思います。


これについては、ダイヤモンド社の寄稿で

は、「地域経済活性化支援機構、中小企業

再生支援協議会といった従前の裁判所以外

の事業再生にかかわる組織が整備されたこ

と」や、「2009年の中小企業金融円滑

化法とその後の金融庁からの指導もあり、

金融機関による返済のリスケジュールが広

範にわたって行われてきたこと」を、その

理由として挙げています。


私も、この分析は正しいと思います。


景気後退局面では、当局の施策は、どうし

ても、会社を倒産させないようにすること

を優先してしまうので、本来は、救うべき

でない会社もその網に救われてしまうこと

になってしまうのでしょう。


しかし、昨年11月に、「2019年9月

中間期の地銀決算は、不良債権処理などの

与信費用が前年の2倍に増えたが、粉飾が

一因とみられる」と報道されました。


(ご参考→ https://bit.ly/2Ue11GM


さらに、地方銀行協会の笹島会長(常陽銀

行頭取)が、「最近、融資取引先の粉飾決

算が見られるようになってきており、それ

に対応して引当金を積んだことが信用コス

ト増加の要因だと思う」と述べています。


このように、地方銀行も粉飾については警

戒しつつあることから、今後は、従来より

も厳しい対応をしていくことでしょう。


ちなみに、粉飾を行うことは、銀行、仕入

先などをあざむくという面で、道義的な問

題もありますが、自社にとっても、課題解

決を先送りするだけでなく、さらに、正常

化を難しくしてしまいます。


現在の中小企業の経営環境は、向かい風が

吹いている状況にあることは確かですが、

だからといって粉飾を行うことは、その場

をしのぐだけであって、まったく利点はあ

りません。


経営者の方は、自社の業況が悪化した場合

に、銀行から従来通りの支援を受けられる

かが心配になり、粉飾することも考えてし

まうかもしれませんが、真の問題の解決方

法は、その時点で、銀行や専門家等に相談

し、早い段階から改善に取り組むことが、

最も望ましいと言えます。

 

 

 

 

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