今回も、融資を申し込む側と銀行の認識の
差について述べたいと思います。
銀行は、融資を受けたい会社の将来の見通
しがどうなるかを予測して融資をするかど
うか判断します。
その基本的な資料は決算書です。
そして、融資を受けようとする会社の業況
が黒字であれば、将来も黒字である可能性
が高いと判断しますが、問題となるのは、
現在の業績が赤字の会社です。
決算書から、将来の見通しを探ることがで
きないことはありませんが、決算書の情報
は限定的であり、特に、赤字の会社の場合
は、さらに詳細な情報がないと、将来の可
能性を判断できません。
そこで、銀行は、決算書以外の情報を求め
るのですが、これが、融資を受ける側とし
ては、負担と感じることが多いようです。
すなわち、税務署から求められる資料は、
税理士の方がすべて作成して提出してくれ
るのに、さらに銀行からも別の資料を要求
されるのは負担だと感じるのでしょう。
しかし、そのような資料は、銀行「だけ」
が必要とするものではなく、経営者にとっ
ても有用な資料です。
ところが、創業して間もない会社や、規模
の小さな会社では、間接部門に割くことが
できる余力が少ないことや、経営者の方が
事業運営に軸足があり、資金管理などのに
あまり目を向けることができないという事
情から、決算書以外の資料を銀行から求め
られると、それは「余計な負担」であり、
銀行「だけ」が必要としている資料と感じ
てしまうのでしょう。
この点については、これまで何度か述べて
きましたので、今回は、その解決として、
簡単なKPIの活用法をご紹介したいと思
います。
KPIは、Key Performance Indicatorの
略語で、日本語では重要業績評価指標と言
われています。
ただ、KPIは、単に重要な指標というこ
とだけではなく、他の指標と関連付けされ
ている点が特徴です。
例えば、会社の最終的な目標を、利益額
500万円とします。
この最終的な目標を示す指標は、KGI
(Key Goal Indicator, 重要目標達成指
標)といいます。
次に、このKGIを達成するために、どの
ような活動をするかを検討します。
例えば、その会社に、商品A・B・Cがあ
るとして、それぞれの商品で、250万
円、150万円、100万円を得ることに
するとします。
そして、その商品ごとの利益、250万
円、150万円、100万円が、第1段階
のKPIとなります。
さらに、その利益を得るために、どれくら
いの売上高が必要かを考えます。
商品Aの場合、3,000万円の売上高が
必要であり、それが第2段階のKPIとな
ります。
そして、さらに、商品Aで3,000万円
の売上高を得るためにはどのような活動を
すればよいかを検討し、主任Dの販売目標
を1,200万円、社員Eの販売目標を
1,000万円、新人社員Fの販売目標を
800万円として、販売促進活動を行うこ
とし、それぞれの目標が、第3段階のKP
Iとなります。
このように、KPIは階層的になっている
点が特徴で、階層の最も上にあるKPIが
KGIということになります。
赤字の会社が、銀行から「現状から黒字を
目指すには、これからどのような活動をす
るのか、具体的な改善策を示してくださ
い」と質問を受けた時、単に、「これから
がんばって、来期は500万円の利益を得
るよう目指します」と説明するよりも、
「来期は500万円の利益をKGIとし、
そのために、このようなKPIを設定し
て、各部門、担当者ごとに、しっかりとし
た計数管理を行います」と説明するだけで
も、説得力は大きく異なります。
もちろん、KPIの設定も、机上だけでで
きてしまいますが、単に、会社全体の目標
利益額を掲げるよりも、KPIを検討する
ときに、最終的な目標がであるKGIがK
PIに細分化されて検討されるので、妥当
性や実現可能性があるかかどうかが検討さ
れるので、説得力の高いものとなります。
そのような過程を経て設定された改善策
は、銀行から見ても、達成可能性が高く、
業績が改善される見込みであると判断され
やすくなるでしょう。
なお、最後にKPIの注意点を述べておき
ます。
ひとつめは、KPIの設定数を多くしすぎ
てしまうと、「管理のための管理」をする
ことになりかねないので、会社の事業の状
況に合わせて、適切な数のKPIの設定数
としなければなりません。
ふたつめは、KPIは、本来は、それを達
成するための戦略も一緒に検討されなけれ
ばなりません。
ただし、それは、社内の管理体制が整った
段階でなければ、管理が大きな負担となる
ため、当初は単に数値目標として設定し、
徐々に高度な管理を行うようにするとよい
でしょう。
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