[要旨]
銀行は、融資相手の会社の利益の一部を、貸付利息として受け取るという、間接的に経済活動にかかわる事業を行っているため、逆に、経済全体が低迷すると、融資相手の会社の業況の低下によって、不良債権処理費用が増加するなど、銀行も間接的に業況が悪化することになります。
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先日、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)の、4月~6月までの3か月決算が発表されました。(ご参考→ https://bit.ly/39G2Wvd )それによれば、同社の最終的な利益は860億円となり、前年同期の2,157億円から60%の減少しています。その主な要因は、1,178億円(前年同期は406億円)の不良債権処理をしているからであり、利益減少額のほとんどは、この不良債権処理費用です。
今回は、たまたまSMFGの決算について述べましたが、他の大手金融グループや、地域金融機関についても、同様の傾向が見られると思います。ところで、ときどき、「銀行は、他人のふんどしで相撲を取る」と揶揄されることがあります。揶揄されることそのものはあまり好ましくないことですが、ある面で、この指摘はあてはまっていると思います。
なぜなら、銀行は、他の会社に融資を行い、その会社が、融資された資金を利用して事業を行い、その事業で得られた利益の一部を、銀行は、貸付利息として受け取るからです。もちろん、銀行は、融資を行うことによってリスクを負うわけですから、貸付利息を受け取ることは妥当ですが、直接的には、利益を得る活動には関わっていないということは事実です。
ただし、それが銀行の役割であり、銀行は、経済社会においては、縁の下の力持ち的な存在です。しかし、このような役割を担う銀行は、銀行が融資をしている会社の業況が悪いときは、銀行も間接的に影響を受けます。その例が、前述のSMFGのように、不良債権処理費用の増加です。
このような面が、銀行経営の難しいところで、自社の利益を、自社だけの努力だけで増やしたり、または、減少を避けたりすることには限界があります。確かに、銀行は、業績のよくない会社と融資取引を解消するなど、自社の都合を優先することがあります。ただ、多くの場合は、可能な限り、融資相手の会社を支えようとするでしょう。
したがって、銀行の業績が悪化したときは、ある面では、銀行が前向きに仕事をしているわけであり、そのような場合、「他人のふんどしで相撲をとって負ける」ことになるということです。このように、銀行の業績を評価するときは、経済活動全体から見なければ、正しい評価をすることができないと、私は考えています。