鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

融資申し込みは口頭で可能か

ときどき、銀行から融資を受けるときに、

決算書以外の資料は出さずに、口頭で依頼

すれば融資を受けられると考えている経営

者の方にお会いすることがあります。


私が銀行に勤務していた時代も、顧客から

口頭の申し込みだけで融資を応じていたこ

とがあり、口頭だけで融資を依頼すること

は可能です。


ただし、口頭だけで融資に応じてもらえる

のは、(1)会社の業況がよい、(2)そ

の会社と融資取引をすることにメリットが

ある、といった条件があります。


(1)については説明はあまり要らないと

思いますが、(2)はどのような時かとい

うと、会社自身や経営者・従業員などとの

預金取引が多く、ライバル銀行に取引を奪

われたくないなどの事情があるときです。


裏を返せば、銀行から見て取引の妙味がな

い会社は、口頭だけで融資を受けることが

できません。


ただ、ほとんど取引のない銀行から、融資

のセールスがあり、そのときは「それほど

いうのなら、1,000万円を借りてもい

いよ」などと返事をすると、それだけで融

資をしてもらえることがあります。


でも、それは、あくまでメインバンクがそ

の会社を支えているという前提で、セール

スをしてきた銀行が融資をするのであり、

もし、億単位の融資をその銀行に依頼した

としたら、口頭だけでは融資には応じても

らえないでしょう。


しかし、セールスを受けた銀行から口頭だ

けで融資をしてもらえたことに気分をよく

して、メインバンクに「先日、●●銀行に

は口頭だけで融資をしてもらえたので、お

たくの銀行にも、口頭だけで融資を受けら

れるようにして欲しい」などと伝えると、

「それなら、これからは、●●銀行さんか

ら融資を受けてください」と、言われてし

まいかねません。


もうひとつ気をつけなければならないこと

は、口頭だけの融資申し込みでは、銀行は

正確な資金需要を確認できないので、希望

額の融資に応じてもらえる可能性が低くな

るということです。


例えば、一時的に売上が落ち込み、3か月

後に回復が見込まれるので、そのとき、

1,000万円の資金不足となるので、同

額の融資を受けたいと口頭で申し込んだと

しても、なぜ売上が落ち込んだのか、本当

に3か月後に売上が回復するのか、資金不

足となる1,000万円は妥当なのかとい

うことは、口頭の説明だけで銀行が事実を

確認することは困難です。


そこで、きちんとした説明資料を提出しな

ければ、融資額を減額されるか、融資その

ものを断られてしまうでしょう。


今回の記事の結論は、口頭だけでの融資申

し込みは可能であるものの、それは限定的

な条件の下でできることなので、希望通り

の融資を受けるには、きちんと資料を用意

できるようにしておかなければならないと

いうことです。


また、説明は割愛しますが、自社の資金状

況を自ら把握しておくことは、決して銀行

のためではなく、自社の資金繰の安定化に

資することでもあります。

 

 

 

 

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